「ランキング」といっても千差万別、玉石混交である。本書の目的は、良いランキングを見極める目を養うことだ。そのためには物の見方・考え方を学ぶことが欠かせない。いい加減なランキングに騙されて、自分の生活の質を落とすことは避けなければならない。
著者がランキングの良し悪しを判断する枠組みとして使っているのが、2次元の図表による分類だ。1つは「一般的-特殊的」の軸、もう1つは「計測方法の適切-不適切」の軸である。良いランキングは、「一般的」で「計測方法の適切」なものだ。逆に「特殊」で「計測方法の不適切」なものは、話のネタレベルでとどめておくべきである。とはいえこちらに区分されるランキングには、おもしろいものが多い。
注意しないといけないのは、「一般的」ではあるが、「計測方法の不適切」な領域である。たとえば「大学ランキング」や「XXX病の死亡率」などがこれにあたる。
「平均」といってもじつは3種類ある。たとえば7人の国語の点をすべて足して、7で割ると平均が出る。これを「算術平均」と呼ぶ。一般的に平均といえばこれだろう。しかし統計学的には、「中間値」と「最頻値」も平均に区分される。
算術平均の場合、「はずれ値(アウトライヤー)」というずば抜けて高い数値を持つ人が混じると、一人で平均値を上げてしまう。アウトライヤーをあえて除いて分析するケースもあるが、その基準は難しく、決まった手法はない。
一方で赤ちゃんの名前ランキングのように、平均の数値の差が極端に小さいのに順位をつけると、数人の誤差でいくらでも変化してしまうこともある。たとえばある年の男の子の名前ランキング1位の占有率は0.67%であることから、そもそもランキングをつくる類の情報ですらない。一方で差が大きすぎてもダメだ。
私たちはいつの間にか、メディアの報道する数値やランキングに洗脳されている可能性がある。数字を冷静に見て、その真の意味を理解し、自ら判断できるようになるべきだ。
指数にすることによって、はじめてランキング化が可能になる。指数とは、指標による定義化・ウエイト付けにしたがって、実際に数字で表現されたものを指す。数字で表現されれば、比較や順位付けも可能になる。
ただしその際は、どのように指標化するのかが問題になる。指標は皆が納得するものでなければならない。これを「妥当性」のある定義という。妥当性は指数やランキングをつくるにあたって、かならず考慮しなくてはならない。
それに加えて「信頼性」も必要である。誰が測定しても、安定して同じような数値が出るようでなければならない。この観点からすると、「住みたい街ランキング」などは本当に誰でもいつでも住みやすい街なのか、疑問に思えてくるだろう。
世の中のランキングの多くは、集団で平均したものを指数化したものに過ぎず、個人にとって役立つものではないことが多い。ランキングを見るときは、妥当性と信頼性をもとに確認するべきだ。
一人の意見は完全に主観的である。一方で、リサーチによる皆の意見(平均)は、ひとまず客観的な数値と見なされる。あくまでサンプル数が、十分に確保されていればの話だが。
サンプル数については、たとえば「12人でも十分か?」と尋ねられても、明白な回答はない。100人くらいの意見の集約なら、きちんとサンプリングされているという前提で、ある程度客観性は保持されていると考えてもいいだろう。しかし残念なことにこの客観性には限界がある。
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