著者は、会社の成長に必要不可欠な4大要素は「ミッション・ビジョン・中期目標」「戦略力」「組織力・人材力」「市場創造・イノベーション」だと考えている。その4つのうち、「組織力・人材力」と「戦略力」はとりわけ重要だ。これら2つは、会社の両輪となり、会社の成長を促進させる。
会社の「ミッション・ビジョン・中期目標」を達成するために、戦略が必要なことは言うまでもない。しかし、その戦略が必ずしも思い通りに実現するわけではない。
では、戦略を実行できるか否かは何によって決まるのか。その鍵を握るのは、本書のテーマである「組織力・人材力」だ。強い「組織力」がなければ、優れた戦略を実行することができず、市場創造も成し遂げられない。これは著者がガリバーの役員時代に身をもって感じたことである。
本書では、「MSマトリクス」というツールを活用し、自社の抱える組織課題の本質的な要因を探っていく。
MSマトリクスとは、タテ軸に「マインドセット」を、ヨコ軸に「スキル」を置いた概念図である。シンプルな図だが、これを活用すれば、自社の組織や人材を俯瞰し、成長を促すことができる。さらには、組織戦略のさまざまな課題を整理し、継続的・本質的な打ち手を実行することも可能だ。
作成方法は簡単だ。大きめの紙かホワイトボードを用意する。タテ軸はマインドセットだ。下から順に、20%、40%、60%、80%、99%、100%という目盛りを記入する。ヨコ軸はスキルである。目盛りは左から、C、B、A、S、SSだ。
次に、付箋をたくさん用意し、付箋1枚につき1名の社員の名前を書き出す。社員数が多ければ、リーダークラスと主要な社員だけでもいい。リーダーと社員で、付箋の色を変えることもポイントだ。
紙と付箋を用意したら、次に説明する「MSマトリクスの軸の定義」に沿って付箋を振り分けていく。あまり深く考え込まず、直感的に貼っていこう。
タテ軸の「マインドセット」は、6つの要素を複合的に勘案し、0〜100%の間で判断する。その6つの要素とは、(1)当事者意識、(2)覚悟、(3)オーナーシップ、(4)全体最適、(5)ミッションフィット、(6)バリュー体現である。それぞれの言葉の意味は、次の通りだ。
(1)当事者意識:事業部や会社での課題を当事者として捉え、自分ができることを主体的に実行できているか。
(2)覚悟:自分の仕事に対して覚悟を持って行動できているか。
(3)オーナーシップ:何事も他責にせず、「自分の人生の主人公は自分である」という自覚を持って生きているか。そして仕事も人生の重要な一部として捉え、「私たちの会社」というマインドと経営者視点で仕事ができているか。
(4)全体最適:自分や自部門の都合やメリットだけでなく、全社のミッション・ビジョン・バリューに則り、全体・中長期視点でも思考・判断・行動ができているか。
(5)ミッションフィット:会社のミッションに深く共感し、自分の目指すものとして捉えて行動しているか。
(6)バリュー体現:自分たちの会社の価値観をどれだけ体現し、それを踏まえた言動を取っているか。他の人の模範になっているか。
ヨコ軸の「スキル」は、(1)テクニカルスキル、(2)組織マネジメントスキル、(3)コンセプチュアルスキル、(4)戦略思考力の4つのスキルを総合的にみて、SS、S、A、B、Cのレベルに分ける。それぞれの言葉の意味は、次の通りだ。
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