著者によると、「凡人には凡人なりの起業の仕方がある」という。自分には強みが特にない、凡人だという自覚があるならば、逆にこの特徴を凡人なりの戦い方に転嫁できる。自分を優秀だと思うがゆえに、自分のやり方に固執して失敗する起業家は多い。そこで、凡人なりの戦い方を徹底すれば、起業家になれる可能性が充分ある。
著者は学生時代、ITベンチャーでインターンとして働いていた。そこで、当時最先端であったiモードの携帯アプリ検索サービスを開発した。拡大しているインフラ向けのサービスを手掛けることで、営業をしなくても問い合わせが次々に舞い込んでくる。いわゆる先行者利益を得た。
この経験から著者は、「つくりたいものをつくるよりも、時代に乗ることのほうが大切」という教訓を得た。時代の流れに乗れば、たとえ人脈がなくても、「お客様窓口」からでも売り込める。このように、凡人起業の成功の秘訣は、「成長市場で誰よりも先にやること」なのだ。
著者がIT業界で起業したのは、大きな資金が不要だからだ。例えば飲食業ならば、良い立地の物件を借りるためにお金がいる。しかし、信用がなければ融資も受けにくい。さらには、設備投資なども必要となり、ひとたびお店を開くと、常連がつくのに時間がかかる。このように、飲食業は条件や制約が多い業種なのである。
一方、ネットサービスのビジネスは24時間365日営業できるうえに、設備投資も不要だ。そのため素人でも始められる。サービス開始後にコツコツ修正ができれば、確実に伸びる起業方法である。自分にアピールする強みがない場合は、ネットサービスのように、勝てなくても工夫次第で「負けづらい手段」をとるとよい。
凡人起業で大切なことは、「いかに失敗しないか」である。まずは、拡大市場において、たたき台を早くつくることだという。完成度は8割でよいので、「これでいける」というものを世に出すのだ。その後、すばやくPDCAを回すことで、戦略的にその市場での先行者になれる。
自分が凡人だと自覚していた著者が重視したのは、失敗確率を下げる仕組みをつくり、その中に自分を置くことだ。これにより、三日坊主な自分を律するというわけだ。
著者が起業する半年前は、iPhoneに比べてAndroidの市場が小さい時期だった。そこで、AndroidというニッチなOS・プラットフォームでビジネスをしようと決めたのだ。
それを念頭に、毎日Androidに関する情報を発信した。特定の業界について毎日発信していると、自然とその分野で専門家になれ、周囲から次第に喜ばれるようになる。こうすると、発信が楽しくなり、コツコツ続けられる。
また、毎日続けることは信用にもつながる。信用がなければビジネスは続かない。こうしたコツコツやる取り組みは、会社員のうちから実践できる。せっかくなら、自分の強みや経験が活かせて、かつ今後拡大・成長しそうな市場で情報発信を積み重ねるとよい。何かの領域のプロになれば、会社がなくなっても、社外から声がかかる可能性が高まるからだ。
日本の経済力は低下する一方だ。30年前の世界での時価総額ランキングでは、日本の企業が名を連ねていた。だが、現在では、上位20位に日本企業は一社も入っていない。
また、人口減少が進み、平均年齢が若い国との間に生産年齢人口の差ができている。人口が減れば国力が減り、日本語圏内でのビジネスは縮小する。この流れの中では、既存のパイを取り合うより、新たなパイをつくるビジネスが重要となる。
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