データ・ドリブン・エコノミー(データ駆動型経済)とは、リアルな世界から集めたデータが新たな価値を生み出し、企業・産業・社会を変革していく一連の経済活動のことだ。これからはデータが起点となり、あらゆる領域で価値を生み出す動きが加速していく。デジタルがあらゆる産業・社会を変革していく時代の到来である。
すでにデジタル化の流れは業界の垣根を壊し、社会に大きな変化をもたらしつつある。インターネットやスマートフォン、クラウド、センサーが普及したこれまでの20年間は、あくまでデジタル革命の「助走期」だ。それはデジタル化に舵を切るためのインフラ整備にすぎない。これからはICT(情報通信技術)が真価を発揮する「飛翔期」に入り、デジタルが社会の隅々まで浸透していくだろう。
とはいえデジタルの浸透には長い時間がかかるのも事実だ。デジタル化を推進するためには組織や働き方の変革が必要だが、従来型のやり方に固執する反対勢力が障害となる。過去の歴史を紐解いてみても、ある産業がバブルの崩壊を経て台頭するまで、30年から40年かかっている。インターネットバブルやリーマンショックでバブルがはじけた時期を加味すると、真の意味でデジタル社会が到来するのは2040年頃になるはずだ。しかし「まだまだ先のこと」と安心してはいけない。デジタル化の動きはすでに始まっている。
インターネットの普及により、世の中を飛び交うデータ量は増加の一途を辿っている。いまやデータは「21世紀の石油」と形容されるまでになった。
インターネットが普及し始めてから現在までの約20年間において、データの主役はWebデータが担ってきた。Webデータの覇者として、グーグルやアマゾン、フェイスブックが知られている。データを握っているこうした企業はプラットフォームを構築し、独自のエコシステムを形成してきた。
しかし私たちの生活のなかには、デジタル化されていない膨大な量のアナログデータがある。そしてIoT(モノのインターネット)の普及により、あらゆるものが低コストでインターネットに接続され、リアルな世界からアナログデータを簡単に収集できる環境が整備されつつある。リアルデータの量は、グーグルやアマゾン、フェイスブックが集めてきたWebデータとは比較にならないほど膨大だ。今後はリアルデータを集めたものがプラットフォーマーとなり、市場を席巻するだろう。しかも誰にでも勝利をつかむチャンスがあるのが、リアルデータの世界といえる。
どんなデータを収集し、どんなサービスを提供すればよいのか、疑問に思うかもしれない。しかしその問いに明確な答えはない。なぜならデータビジネスにおいては、走りながら考える過程で、新たな価値が見つかるからだ。
たとえばアマゾンがやっている「アマゾンレンディング」という小口の融資事業は、事業者の取扱商品や取引履歴、在庫状況といったデータを収集していくなかで、なかば偶発的に生み出された。またアメリカンフットボールでは、戦略分析のために始めた選手のプレーをデジタル化する取り組みが、結果的には観客にとっての魅力的なコンテンツ提供にもつながっている。どちらのケースにおいても、データを収集した当初は、新しいサービスを生み出すことを想定していなかったはずである。
新たな価値が生まれるかどうかは、やってみなければわからない。
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