現在の日本には、労働者に限っても約146万人(2018年10月末時点)と数多くの外国人が暮らしている。その他の人々を合わせると約264万人(2018年6月末時点)にもなり、これは日本の全人口の2%にも相当する。1988年には約94万人に過ぎなかったことを踏まえると、平成の30年間でじつに3倍近くに増えたことになる。
だが政府は「移民」という言葉を意図的に避け、外国人労働者を「外国人材」と呼ぶ。あたかも日本が、ひとつの巨大な人材会社でもあるかのように。その実態として、移民や外国人の支援などを統括する省庁もなければ、私たちの感覚も大きく変化した現実に追いつけていない。外国人や移民の存在をいまだに「新しい」もの、「異なる」ものと見ているのが、日本社会の一般的な感性だ。
欧米では「移民」に関して、さまざまなトライアンドエラーが繰り返されてきた。だが「移民」は欧米だけの問題ではない。日本にも「移民」がいて、取り組むべき「移民問題」がある。「遅れてきた移民国家」として、「移民」にどう向き合うかを考え始めなければならない。
日本にはどのような外国人が住んでいるのだろうか。出身国別に見ると圧倒的に多いのが中国で、74万人強と全体の3割近くを占めている。次に韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルと続き、この上位5カ国で全体の4分の3近くを占める。
在留資格の種類で見ると、5つのカテゴリーに大別できる。もっとも多いのは「日本人の配偶者等」などを含む「身分又は地位に基づく在留資格(以下、身分・地位)」で、全体の半数以上がここに該当する。この資格群は更新の制限がなく、どんな仕事にも就けるうえ、仕事がなくても在留し続けられるのが特徴だ。次に多いのは「専門的・技術的分野の在留資格(以下、専門・技術)」である。在留資格のうち唯一「就労」を表向きの目的としたもので、細かく分けると15の資格がある。3番目に多いのは「留学」で、その後に「技能実習」「家族滞在」が続く。
5つのなかでは、「身分・地位」カテゴリーの在留資格がもっとも安定している。「専門・技術」カテゴリーも、当該分野の仕事さえあれば、在留し続けることが可能だ。5番目の「家族滞在」とは、その配偶者と子どもに付与されるものを指す。一方で「留学」で在留できるのは学校に所属している間のみで、卒業後は「専門・技術」に切り替わることも少なくない。定住からもっとも遠いのが「技能実習」だ。在留期間は最長5年と定められ、その間は家族を呼び寄せることもできない。
こうした在留外国人は、はたして「移民」なのだろうか。国連によれば、国境を越えて移住してから3カ月以上12カ月未満の者を「短期(一時的)移民」、12カ月以上の者を「長期(恒久的)移民」と呼ぶのが一般的だ。だが国際的もしくは学術的に定まった「移民」の定義があるわけではない。日本にいる「移民」の数は、どんな定義を選ぶかによって変わるうえ、定義の選択自体が政治性を帯びる。
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