刊行から100年以上にわたって読み継がれてきた『こころ』(夏目漱石)。著者はこの作品を、「先生」の自己愛にまみれたマウンティングの物語として問題視している。
『こころ』は、大学生である「私」が鎌倉で「先生」に会うところからはじまる。交流を深めるうち、「先生」への憧れを募らせる「私」。だがある日、「私」のもとに先生からの遺書が届く。そこには、「先生」の過去がつづられていた。
物語の中で上品な文化人として描かれる「先生」だが、今を生きる大人として、そんな彼に共感しているようではいけない。「先生」が「K」に自分と同じ下宿先を紹介したのも、「K」が恋心を抱いている「お嬢」を奪うような形で結婚したのも、「先生」から「K」へのマウンティングだ。しかも「先生」はその女性に本気で恋しているようには見えない。「K」は親友に裏切られたショックのためか、自殺してしまう。
『こころ』は明治の終わり頃が舞台となっている。明治天皇の崩御によって時代が大きな転換を迎えるなか、天皇の葬儀の日に乃木希典と妻の静子が自殺するという事件があった。
「先生」は遺書の中で、乃木大将の自殺に言及している。そこから著者は、「先生」は乃木大将に象徴される自死を「ブーム」のように捉え、それに乗っかっていただけなのではないかと批判する。乃木大将に付随する“かっこいい”日本人男性のイメージを、自分にもちゃっかり投影させようとしているのではないかと。そしてそんなイケてる自分を「私」に見せつけ、マウンティングしているのではないだろうか。
男性読者が『こころ』を読むときは、「女性を道具として扱い、周りの人たちを下に見るマウンティング行為が描かれているのではないか」という心持ちでいると、多くの気づきがあるだろう。そもそも、著者が働くホストクラブのビジネスモデルは「男性中心社会」という前提の上に成り立っているようにも見えてくる。
ホストクラブは女性に楽しんでもらう場所だ。ホストは誠心誠意お客様に接する。それが女性にとって快適なのは、女性が日常生活において男性から「下」に見られて辛い思いをしているからなのかもしれない。
著者の目標は、ホストクラブの名物ともいえる「ランキングシステム」を廃止して、男女を対等にし、女性が非日常を楽しめるような場にすることだ。女性が「自分の男」を勝たせるためにお金をつぎ込む場ではなく、翌日からの仕事の活力を得る場にしたい。そしてホスト自身も別の業界や会社のことを学んで視野を広げられるようにしていきたいと考えている。
1987年に出版された『ノルウェイの森』(村上春樹)は、1年間で270万部を売り上げた人気作品だ。主人公のワタナベは高校の頃、親友のキヅキを自殺という形でうしなう。大学生になったワタナベはキヅキの恋人であった直子と再会。彼女とのデートを重ねるようになるが、直子はまだキヅキの死から立ち直れず、精神病の療養所に入所する。ワタナベはそんな彼女を繰り返し見舞うが、直子は最終的に自殺を選んでしまう。
著者が注目したのは、ワタナベという“モテ男”のスタンスだ。『ノルウェイの森』はすべてのホストが読むべきバイブルである。ワタナベのような男でなければ、歌舞伎町でホストとして生き残ることはできないと考えている。
3,400冊以上の要約が楽しめる