サブスクリプション2.0

衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデル
未読
サブスクリプション2.0
サブスクリプション2.0
衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデル
未読
サブスクリプション2.0
出版社
出版日
2019年06月24日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

音楽ストリーミングサービス「Spotify」や野菜宅配サービスの「Oisix」。近年、こうした新しい形のサブスクリプションサービスが脚光を浴びている。いわば「サブスク2.0」と呼べるサービスが数多く誕生するなかで、当然ながら成功するものもあれば失敗するものもある。

本書はサブスク2.0の実態や特徴を分析し、様々なケーススタディを通じて、この新しいビジネスモデルを成功に導くために何が必要なのかを解き明かしていく。もちろん、確固たる成功パターンが見えているわけではない。しかしながら、本書はサブスクリプションの本質を突いた、事業成功に通じる根本的な原則を鋭く捉えている。

そもそもサブスクリプションがどのような経緯で生まれたのか。サブスクリプションサービスの料金設定やマーケティング方法、KPIの設定など、具体的な戦略を立てる際の肝は何なのか。失敗事例からどんな教訓を得られるのか。こうした、読者のまさに知りたいところに切り込んだ一冊だ。

本書に登場するサブスクリプションサービスはいずれも興味深く、実際に会員になってみたいと思わせるものも多い。サービスの魅力をどう設計していくかという観点に立つと、各事例の応用の幅がさらに広がるはずだ。サブスク2.0というビジネスの最前線をわかりやすく提示した本書は、あらゆる業種の方に多くのインスピレーションを与えてくれることだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

日経クロストレンド
「新事業を創る人のデジタル戦略メディア」を編集コンセプトとして2018年4月に創刊した会員制有料オンラインメディア。テクノロジーがビジネス環境をどう変えるのか、そして、その先の消費トレンドはどう変わるのか、「デジタルで変わる企業と消費者の関係」を徹底的に取材し、マーケティング戦略立案の指針になる事例、新しいモノ作りでのデータ活用法、ビジネスパーソンが知っておくべき消費トレンド情報を提供している。

本書の要点

  • 要点
    1
    人口減少に伴い、新規顧客の獲得が難しくなり、所有から利用へと消費トレンドが変化する今日では、新たなマーケティング手法が必要とされている。
  • 要点
    2
    サブスク2.0で提供すべき価値は、「新しい消費体験」「圧倒的な利便性」「コスト優位性」だ。
  • 要点
    3
    サブスク事業成功のカギを握るのは継続率だ。継続率を高く保つためには、徹底した顧客目線を持つことが欠かせない。
  • 要点
    4
    顧客のデータをうまく活用し、サービスの細かいアップデートを行うことで、顧客・企業双方にとって素晴らしいサービスが生まれる。

要約

サブスクリプション最前線

サブスクリプション市場の急拡大

定額聴き放題の音楽ストリーミングサービス「Spotify」が台頭するなど、この数年で音楽・映像作品の消費形態は大きく変わった。日本レコード協会によると、日本の音楽サブスクリプション(以下、サブスク)の市場規模は、2014年から2018年までの5年間で11.3倍にまで拡大したという。そして現在、このような市場規模拡大の動きが、様々なサブスクリプションビジネスにおいて見受けられる。

進化系サブスクモデルの三つのポイント
takasuu/gettyimages

最近になって急に拡大しつつある新しいサブスクモデルは、有形商品を扱っているケースが多い。その点で、駐車場の月極め契約など、以前から存在するサブスクモデルとは大きく異なっている。新しいサブスクモデルには三つのポイントがある。

一つ目は、「メーカーの参入」だ。従来のサブスクビジネスを運営するのは小売・サービス業が主であった。これに対し、近年では大手メーカーの参入が相次いでいる。

二つ目は、サブスクに「シェア」の概念が組み込まれていることだ。例えば、車や衣類などの使い回しが可能な商品に関しては、顧客が好みや状況の変化に応じた商品を利用できるよう、商品をシェアするサービスが台頭している。

三つ目は、「個別カスタマイズ化」だ。AIやマスデータを駆使して顧客それぞれの好みを割り出し、それに応じてカスタマイズされた商品を顧客に個別に届けている。

消耗品の定期購入など、従来のサブスクモデルを「サブスク1.0」とするなら、こうした特徴を持つ新サービスは「サブスク2.0」と言えるだろう。

マーケティング手法の180度転換

サブスクモデルが広がっているのは、「衣」「食」「住」「(移)動」「楽(しむ)」の分野である。現状では、確実にサブスクモデルを成功させる法則は見えていない。

しかし、日本では人口減少に伴い、新規顧客の獲得が難しくなり、既存顧客維持の重要性は高まる一方だ。そして、消費トレンドは「所有」から「使用」へと移り変わっている。このような変化のもとでは、モノの作り方や売り方も全て変えていく必要がある。本書の編集部が考えるサブスク2.0で提供すべき価値は、「新しい消費体験」「圧倒的な利便性」「コスト優位性」の三つだ。

【必読ポイント!】 平均継続率95% 高級バッグレンタルサービス

顧客の「選ぶのが大変」「返すのが嫌だ」を解決
heckmannoleg/gettyimages

ラクサス・テクノロジーズが手がける「ラクサス」。これは、月額6800円(税別)で、エルメスやプラダなどの高級バッグが借り放題というサービスだ。会員の平均継続率は95%に達し、2015年2月のサービス開始時に加入した会員の半数以上が、継続利用している。つまり、LTV(顧客生涯価値)は今も伸び続けているというわけだ。

この圧倒的な支持の背景にはワケがある。多くの人はネットショッピングの際、他のサイトで値段などを比較し、お得な買い物をしようとする。同社社長の児玉昇司氏はこの状況を、「選ぶ苦しみに時間を費やしている」と表現している。

また、レンタルサービスの商品を返却する際、心理的抵抗を伴うことが多い。このことを知っていた児玉氏は、サービスを定額制にした。送料などの追加料金を支払わず、気軽に何回でもバッグを無料で交換できるようにし、またその返却期限をなくしたのである。これにより、ラクサスは「選ぶのが大変」「返すのが嫌」という利用者の不満を解決してみせた。

クレーマーは一発退場させる

ラクサスでユニークなのは、クレーマーや商品の使い方が荒い顧客に対して、厳しい措置をとる点だ。クレームを受けた担当者が、その顧客の言葉使いが荒いと判断した場合には、一回で利用停止処分となる。また、バッグの発送前に写真を撮っておき、AIが返却後のバッグの状態と比べる。その際に使い方が荒いと判断された顧客も一発退場させる。

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要約公開日 2019.08.21
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