商品やサービスをうまくお客に売ることができる人は、根本的な、シンプルなルールに従っている。それは、セールスパーソンが「ゾーン」に入ることだ。
著者は、セールスパーソンの経験が12年間に及んだころ、ある商談でふしぎな感覚を味わった。初めて面会した人とのあいだに大きな信頼を感じ、営業らしい話もせずにセールスが完結した。あとには、満ち足りた気持ちが残った。
そのときの出来事を分析してみると、何とか相手の「お役に立ちたい」、という感情が生まれたことが重要なきっかけとなったようだ。その感情が生まれた瞬間に、著者は「純粋な動機」を持ってゾーンに入っていたのだという。
大事なことは、お客のことだけを考えて、心身ともに今この瞬間に集中させることだ。セールスパーソンがそのような心境になっている時、「お役に立ちたい」という気持ちが生まれるのだ。この集中こそが「ゾーン状態」なのである。
モノを売るためのカギは、ゾーン状態をつくることにある。そして、それは手順を踏めば誰にでもできるものなのだ。
かつて著者が行なっていたモノの売り方は、「ゾーン状態での売り方」ではなく、「説明中心の売り方」だった。「説明中心の売り方」とは、扱っている商品・サービスの内容にほれ込んで、その良さを伝えようという熱意に任せた売り方だ。一方、「ゾーン状態での売り方」とは、お客のことを理解し、自分の中から「この人のためにお役に立ちたい」という気持ちをわきあがらせて売る方法だ。
「説明中心の売り方」で購入したお客は、セールスパーソンの熱意に押されて「そんなにいいものだったら買ってみよう」と採用する。一方、「ゾーン状態での売り方」の場合は、お客自らが「これは自分に必要なものだから買って使ってみよう」と採用する。後者は、自発的にほしいと思って採用するのだ。
この「購入する動機」の違いが、購入後に大きな違いを生み出すのである。購入後に満足度が高く、追加販売や紹介にもつながるのは、「ゾーン状態での売り方」のほうだ。
セールスパーソンは、お客の話している事柄のイメージに共感しなければならない。5W1Hで質問を重ねていくと、イメージが具体的になっていくので共感しやすくなる。また、お客の話を促すために、「共感の言葉をしっかり口に出す」ことも大切だ。共感の言葉を発するうちに、セールスパーソンもお客の話に入り込んでいくことができる。これがまさにゾーンの入り口だ。
そして、ゾーン状態でお客の情景を描き切り、心情を理解したときに、「何か自分のできることはないだろうか」「私のできることでお役に立ちたい」という気持ちがわいてくるのだ。
ただし、お客の話をイメージしていくときに間違いやすいのが、以下の2つの点だ。
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