日本のコンテンツ産業は1995年を境に失墜した。CDが売れなくなった音楽業界をはじめ、ラジオ・新聞・出版業界は衰退の一途をたどっている。マンガ・ゲーム業界ですら国内だと衰退傾向にある。例外的にテレビ業界は成長してはいないものの、大きく衰退もしていない。とはいえほぼすべてのコンテンツ産業で、ビジネス基盤の再構築が求められているのは間違いない。出版・映画・テレビといったマスメディアがトレンドを創り出す時代は終わったのだ。
このようにコンテンツをモノとして売るパッケージが減少する一方で、映画やコンサートのようなロケーションビジネスは微増している。その背景には、人と人との結びつきを重視する「コミュニティ機能」の再評価がある。「共体験すること」の価値が見直されており、とりわけアニメを取り入れたビジネスの成長は目覚ましい。「作り上げたものを配布し、視聴してもらう」という一方向モデルではなく、「ユーザーコミュニティの形成を前提に、コンテンツを生きたものとしてアップデートし続ける」という双方向モデルへとビジネスチェンジできた産業が、2010年代に入ってからの成長産業になっている。
2010年代に入ってから、新たなビジネスモデルが登場した。アニメ作品など、量産しにくい2次元の高価で作品性の高いものを経済圏の基盤としつつ、3次元の安価で機動性の高いメディア・ツール・タレントにのせてコミュニティを形成しながら、2次元と3次元をメディアミックスすることで、作品全体の「キャラクター経済圏」を形成するというモデルだ。この変化をいち早く取り入れたのがゲーム業界であり、音楽業界である。一方で放送・新聞・出版などのマスメディアは、いまだ旧時代のパッケージ中心のビジネスモデルから脱却できていない。
もはやデジタルコンテンツは「プロモーションメディア」だ。現代はデジタルの力で「流行」が簡単に起きるようになり、その価値は下がっている。ちょっとした流行は、日々そこら中で起きている。「流行の維持」は格段に難しくなった。
常時レッドオーシャンのようなキャラクター世界で、ユーザーの関心を集め続けるためには、コンテンツを提供し続けることが必要だ。とはいえアニメもゲームも、制作には億単位の費用がかかる。こうしたメディアは高頻度で展開できない。それに「代わる何か」でサービスを提供し続けるチャネルを考えなければならない。
タレントがSNSで毎日コンテンツを発信し、定期的にイベントを行うことで共体験を生み出す。あるいは商品化グッズでユーザーの世界を固め、毎日のようにそのコンテンツを想起させる――こうした構造を形成しなければ、継続性の高いコンテンツにはならない。総合力がなければ、いまのコンテンツの世界では勝負できないのだ。
ヒット商品の本質は、その商品の機能そのものではなく、「ヒットしており、周囲が消費している」という事実だ。まわりが消費していれば、それはヒットしていることになる。
人は常に「みんなで集う何か」を求めている。みんなお祭り騒ぎが好きなのだ。そういう意味で注目したいのがライブコンテンツである。ライブコンテンツは、同じものを同じ時間に同じように体験する。そしてその規模が大きくなるほど面白さも広がる。集団がひとつになって動くことそれ自体に快感があるからだ。
注目したいのが、お祭り騒ぎは「ブランドへの再結集」という回帰的な動きを見せるということである。
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