書評の仕事

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出版社
ワニブックス

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出版日
2020年04月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

世の中に星の数ほどもある本の中から、さてどれを読もうか? そんなとき、ガイドになってくれるのが「書評」だ。かつて書評はどこか重々しく難解なものが多かったが、インターネットの普及によって、より身近でカジュアルな存在になりつつある。

書評は私たちに、これまで興味がなかったジャンルの本や、存在に気づかなかった本と出会うきっかけを与えてくれる。書評の出来しだいで、本の売れ行きまで決まってしまうこともあるほどだ。そんな「書評」についてのあれこれを余すところなく伝えてくれているのが本書だ。

著者は、おもにウェブメディアで年間500冊もの書評を執筆している書評のプロだ。本書では、そんな著者が「書評の仕事」を通して体得した、実用的な「読みかた」「書きかた」「選びかた」「考えかた」が指南される。書く仕事をしていなくても、メールやプレゼンのためのテキストなど、文章を書いたり読んだりする場面は、ビジネスの現場にいくらでもある。本書には、そんなビジネスシーンで役立てられる技が満載だ。

本書には、「書評の仕事」にまつわる裏話も多く含まれている。プロの書評家がどんな一日を送っているのか、大量の本をいつ読んでいるのか、原稿料はどれくらいか……など、書評家やフリーランスのライターをめざす人にとってはもちろん、そうではない人にとっても興味深く読めるはずだ。「本好き、必読!」な一冊である。

ライター画像
上條まゆみ

著者

印南敦史(いんなみ あつし)
作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。 広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。 書評を出すたびAmazonランキングが急上昇する人気の書評家となる。主な書評発表媒体に、「ライフハッカー【日本版】」「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「マイナビニュース」「サライ.JP」「WANI BOOKOUT」など。年間約500冊という驚異的な書評量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)のほか、音楽関連の著書も多数。2020年6月、『日本一ネット』にて“書評執筆本数日本一”に認定される。

本書の要点

  • 要点
    1
    書評を書くにあたって、書評家が心がけるべきことは2つある。「伝える=伝わりやすい書き方を考え、実行すること」と「共感をつかむ=読者の目線に立つ努力をすること」だ。
  • 要点
    2
    「意外にもしっくりきた(共感できた)本」や「自分から遠い場所にあった(はずの)本」との出会いは貴重だ。最初はとくに期待していなかった本が、自分を変えてくれることもある。
  • 要点
    3
    自分の文章を好きになりたいなら、特に好きな書き手を見つけ、その書き手の文章を多く読んでみること、そしてその書き手の文章を意識しながら書いてみることが有効だ。

要約

書評家の仕事

情報提供に徹する
serezniy/gettyimages

「書評」とは何だろうか。『新明解国語辞典』第7版には、書評とは「(読者のために)新刊の書物の内容を紹介・批評した文章」とある。読者に向けた新刊ガイドと理解すればいいだろう。

著者は、書評には2種類あると考えている。新聞や雑誌などの紙媒体に掲載される「トラッド書評」と、情報系サイトなどで公開される「ネオ書評」だ。著者は主に、「ネオ書評」を手がけている。

「ネオ書評」の目的は、情報提供である。情報系サイトで求められているのは「おもしろそうな本」や「ためになりそうな本」や「気持ちが楽になりそうな本」の紹介であり、そこに書き手の主観や批評は必要ない。書評家は黒子に徹して、読者に「本と出会う機会」を提供する。

とはいえ、そんな中でも、自分らしさを表現することはできる。「なぜ、その本を選んだのか」「その本のどこに焦点を当てるのか」などといった要素に、書評家の個性があらわれるのだ。

伝わりやすく書き、共感をつかむ

「書評」を書くにあたって、書評家が心がけるべきことは2つある。それは、「伝える=伝わりやすい書き方を考え、実行すること」と「共感をつかむ=読者の目線に立つ努力をすること」である。

「伝える」とは至ってシンプルに見えるが、決して簡単ではない。ただ書くだけではなく、どういう書き方をすれば伝わりやすいか、どういう書き方を避けるべきかを考えた上で書く必要がある。

「共感をつかむ」はさらに難しい。読者の目線に近づき、「読者は何を知りたくてその書評を読むのか」について熟考した上で、読者を納得させられる文章を書く。そうでないと、ただの自己満足になってしまう。

さらに著者は、読者に「おトク感」を提供することを心がけている。書評を読んだ人が「自分の仕事に役立ちそうだな」と実感し、「読んでみよう」と思える書評こそ、読者にとって有用なものだからだ。

書評家の一日

著者はどのように「書評」の仕事をこなしているのか。

朝は6〜7時ごろに起き、自分が書いた記事をSNSで告知する。その後は、毎日見ているニュースサイトやブログなどをチェックする。

原稿の執筆は、頭が冴えている午前中なるべく早い時間から始める。昼食を済ませて、また執筆。眠気がやってきたら無理をせず、居眠りしたり、外に出て気分転換をしたりするのが習慣だ。夜は家族と食事をとって、12時前にはベッドに入り、読書をしてから眠る。

仕事をする上で心がけているのは、気の進まない仕事から着手すること。その方がストレスも減るし、効率的だからだ。好きな仕事を優先すると、後回しにした仕事のことが頭から離れず、つらい時間が倍増してしまう。

書評家の「裏」話

書評家の6つの視点
SasinParaksa/gettyimages

「書評」はどのように書いていくか。なにより大切なのは、読者ターゲットを見極めることだ。読者と目線を合わせて、読者がそこからなにを感じているかを推測する作業である。

著者は、書評家の視点として、次の6つを挙げている。

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要約公開日 2020.08.09
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