現場のチームを直接マネジメントする課長は、最初の管理職だ。予算・計画・人事評価などの権限が与えられ、課を運営する責任を担う。
「リーダーシップ・パイプライン」の考え方にのっとれば、役職によって必要な職務要件は変化し、ふさわしいマインド、スキル、時間配分が求められる。
課長はまず、従業員を管理する「管理者」としての立場に変化したことを自覚し、経営サイドの意向を理解して課を運営していくマインドが求められる。そして、課長は実務についての「テクニカル・スキル」以上に、課や部下の目標設定・動機付け・人材育成を行う「ヒューマンスキル」の強化と実践を意識することが望ましい。さらに経営者層になっていく未来を見据えた場合、方針を決めたり戦略を立てたりする「コンセプチュアル・スキル」も磨いておくとよいだろう。「実務は極力、課員が行うものである」という割り切りも必要だ。担当業務に時間を使うのではなく、課のマネジメントと人材育成を中心とした時間配分に切り替えていかなければならない。
課長には中間管理職ならではの辛さと同時に、多様な部下を直接動かしながら大きな仕事ができる面白さがある。この役職を楽しみながら、ぜひ自己成長につなげていってほしい。
マネジメントで最初にやるべきなのは目標設定だ。価値があることを成し遂げるには、具体的で明確な目標設定が不可欠だ。会社の「経営理念」を基軸として、「部の目標」をブレークダウンしていったものが「課の目標」になる。この目標は、「課長の目標」にならないよう、できるだけメンバー全員を巻き込んで「課全員の目標」になるようにしたい。
そのうえで、課のメンバーのそれぞれの目標設定を行う場合は、「SMART」というキーワードが参考になる。SMARTとは目標設定のポイントとなるキーワード、「S(Specific)」「M(Measurable)」「A(Attractive)」「R(Realistic)」「T(Time Bound)」の頭文字をとったものである。
目標はまず、具体的(Specific)でなければならない。「ただ単にがんばる」というのではなく、どの商品、サービスの何を目標にするかを明確かつ具体的にする。
次に、目標は測定可能(Measurable)である必要がある。営業部門の売上目標はもちろん、経理部門のような間接部門であっても「決算報告の作成時間を3週間から2週間へ短縮する」といった数値目標を持つことができるはずだ。
そして、目標達成が本人にとっても魅力的(Attractive)であることが望ましい。人は基本的に自分にメリットがあるかどうかを考えるものだ。本人がワクワクできるようにしたり、社会の役に立つことを伝えるようにしたりすると効果的だ。また、理想的な目標とは、挑戦的でありつつも実現可能(Realistic)なものだ。高すぎる目標は本人のやる気を削いでしまう。部下の実力ややる気を見ながら、本人が少し努力したり能力をあげたりすることで実現できるような目標設定をすべきだ。
最後に、年度目標や中期目標を立てるなどして、目標に時間軸(Time Bound)をもたせた方がよい。一定間隔でマイルストーンを設定して、定期的にチェック&アクションをすることをお勧めしたい。
Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(対策)からなるPDCAサイクルはマネジメントの基本である。しかし、実際に「PDCAを回せている」と自信を持って言える人はまだ少ないのが現状だ。
3,400冊以上の要約が楽しめる