インターネット利用者のホームポジションがポータルサイトからSNSへ移行して久しい。企業のPRの場も、検索エンジン最適化(SEO)からTwitterなどのSNSになっている。
とはいえ、SNSは本来コミュニケーションの場だ。SNSユーザーは、検索エンジンから自社サイトにアクセスしてきた人や、通販サイトなどで買い物をしている人と比べれば購買意欲は低く、そんな場で企業が宣伝文句を連呼するのは逆効果にもなりかねない。
企業によるTwitterの運用は、プレゼントキャンペーンなどを行う「販促型」と、消費者とつながる「コミュニケーション型」の2つに分けられる。本書で紹介される企業が行っている「コミュニケーション型」の運用では、大きなキャンペーンを打たなくとも、たった1人の「中の人」さえいれば消費者とつながれることが特徴だ。本書に登場する「中の人」は、企業人としての意識を持ちながらも、その人個人の力で消費者とつながり、ファンを熱狂させている。
本要約では、本書で紹介される6社のうち、3社の「中の人」の取り組みを取り上げる。彼らの日々の努力と、ファンを熱狂させる仕組みを見ていこう。
最初に登場するのは、セガグループの公式Twitterアカウントを運営し、350以上もの自社アカウントの統括・利用促進を手掛ける「中の人」だ。
セガグループでは、所有しているアカウント数が多い分、担当者が新人や経験の浅い投稿者であることも少なくない。そのため、公式Twitterアカウントの「中の人」は、アカウントの開設時のサポートも担当し、新任の投稿者、管理責任者にはSNS運用のためのeラーニングを受講してもらうことにしている。eラーニングの内容は、肖像権への配慮といった基礎的な内容から、炎上しやすい内容の把握、キャラクターの権利に抵触しねない投稿を避ける方法までと幅広い。こうした徹底した教育によって、トラブルを未然に防いでいる。
「中の人」は、どの日に何の投稿をするか、スケジュール表に入力して管理することを推奨。その表をもとに、画像などの素材を用意したり、許可を取ったりして準備を進める。
投稿のクオリティを上げるためには、編集会議がおすすめだ。1人で担当している場合は「ひとり編集会議」になる。編集会議では、「この投稿内容ならリツイートやいいねの数はこのくらいだろう」という目安を立てておく。そして投稿後、実際の反響と比較してみよう。思ったよりも反響が少なかったなら、見せ方や伝え方に工夫の余地があったのかもしれない。反響が大きければ、そのテーマやジャンルの投稿を増やすなど、投稿内容の編成を考える参考になる。こうしてPDCAを回し、投稿のクオリティを高めていく。
基本的なことではあるが、SNSを使うこと自体が目的化してしまうと本末転倒だ。担当アカウントの関心層はどんな人で、どんな情報を求めているか、どのようなSNSが適切なのかを考える必要がある。
セガグループでは、ゲームユーザーはTwitter利用者が多いことから、ほとんどのゲームタイトルでTwitterを利用している。セガのお店、ゲームセンターでは店舗ごとのTwitterに加えてLINEのアカウントを開設し、クーポンを配信したり、Twitterと連動して謎解き企画を開催したりもしている。
通常の企業コラボというと、綿密に準備した上で実施するものだ。その一方で、思いつきのツイートがそのまま企画になり、「筋書きのないドラマ」をフォロワーと共有しながら進行するのもTwitterならではだ。
セガグループは18年6月に開催された「東京おもちゃショー2018」にて、「クレヨンしんちゃん」に登場する「野原ひろし」の靴下の臭いを化学薬品で再現して“体感”できるコーナーを設置した。
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