現代、働く人々に求められる能力の幅は広がる一方だ。正解がわからなくとも、歩みを止めるわけにはいかない。そんな現代のビジネスパーソンに必要なのが名著である。名著を読むことで、次の3つの効果が得られる。
1つ目は、自分を知ることだ。変化の激しい世の中を生き抜くためには、まず自分自身をよく知らなければならない。好きなことや嫌いなこと、得意なこと、また、何を美しいと思うのか。こうした自分自身の価値観を知らなければ、キャリア選択もままならない。名著を読めば、人が普遍的に悩むことや自分の個性を理解するためのヒントが得られるだろう。
2つ目は世の中を知ることだ。世の中の仕組みを知っていれば、ビジネスに限らず日々の出来事がすっきりと理解できるようになる。名著は著者の研究の集大成である。名著を読めば、効率よく世の中を理解することができるのだ。
3つ目は行動を変えることだ。自分を知り、世の中を知れば、自分の行動に自信が持てるようになる。情報を手に入れ、自分の選択に自信が持てれば、行動に力強さが生まれる。
こうした3つの効果には相互作用があり、好循環を生む。もちろん、時代の違いなどから、本に書かれていることがそのまま現実に応用できないこともあるだろう。名著の中から、今の自分に合うものと合わないものを取捨選択しながら、主体的に読書する姿勢が必要だ。
ここでは、グロービス経営大学院教授を務める嶋田毅氏と本書の著者・大賀康史氏の対談から、ポイントの一部を紹介する。
読書の大きな効能の1つとして、嶋田氏は「視座を高める」ことを挙げる。目の前の仕事に追われるのではなく、一段高い視座に立って、その仕事の社会における意義を客観視できるようになる。
大賀氏によると、歴史の流れという時系列の中で物事を捉える力も、読書を通じて身についていくという。歴史や哲学、科学など、長い時間をかけて積み上げられてきた学問にふれることにより、大きな流れの中で自分の立場を相対化することができる。さらには、物事の普遍的な本質や限界が見えてきて、より立体的にその領域を理解できるだろう。
フライヤーでは「ヒラメキ溢れる世界をつくる」というミッションを掲げている。ヒラメキを得て、イノベーションにつなげていくために、嶋田氏がすすめるのは、思い切って専門とはまったく異なる領域の本を読んでみることだ。イノベーションとは「新結合」である。固定観念にとらわれず、好奇心や純粋な疑問を持ち続けることが、「ヒラメキ」につながる。
また、「世の中で話題になっている本」を無心に読むのもよい。話題の本には、多くの人に支持される理由がある。そこから本質的な示唆が得られるだろう。
ここからは、本書で紹介される名著の一部を紹介していこう。いずれもフライヤーとグロービス経営大学院が共同で主催する「読者が選ぶビジネス書グランプリ」の受賞作品である。
まずは「読者が選ぶビジネス書グランプリ2 0 2 0」自己啓発部門受賞作品の『天才を殺す凡人』だ。世の中には才能を活かせる組織も、才能を殺す組織もある。また、自分自身の才能を活かせる人も、そうではない人もいる。「自分にどんな才能があるのかわからない」「まわりの人が自分の才能に気づいてくれない」。本書はこうした悩みに鋭く答えてくれる一冊だ。ストーリー仕立てになっており、「天才」「秀才」「凡人」と、その互いの関係性を明確にしながらストーリーが進行する。
3,400冊以上の要約が楽しめる