読書が大好きな著者・三谷宏治氏は、子どもの頃から多くの本に親しんできた。SFや科学書、日本童話集を読み漁り、大学浪人時代以降は手当たり次第に乱読した。その頃は、ストーリーや新しい知識にただ浸っていれば満足だった。しかし大人になってから、読書には「戦略」が必要だと思うようになった。
きっかけは社会人2年目のある日、職場ではじめて人と意見が被ったことだ。同僚と同時に、「◯◯って××だよね」と同じことを口にしてしまったのだ。「他人と同じこと」しか言えない経営コンサルタントに存在意義はない。著者は、自分のあまりのつまらなさにショックを受けた。
その原因は1年半前から、人と同じものを読み続けていたことにあった。新卒の若手コンサルタントであった著者は、自らの弱点を埋めるために必死で本を読んでいた。城山三郎などのサラリーマン小説を100冊、ビジネス基礎本を100冊以上。雑誌もビジネス系ばかりを、月に何誌も読んだ。そんな生活を1年半も続けていたから、人と同じ反応しかできない凡庸なコンサルタントになってしまったのである。
人の体が食べるものからできているように、人の精神は読むものからできている。著者は以後、楽しむための読書・ビジネスのための読書から、自分の独自性をつくるための読書にシフトさせていった。自分を自分であり続けさせるための読書、それが戦略的な読書(戦略読書)なのである。
イノベーティブな商品・サービスも、いつかは競合に追いつかれ、コモディティ(誰でも安くつくれるもの)になっていく。そうなると価値は下がり、いつでも他社品に取り替えられてしまう。しかし商品自体がコモディティになっても、自社にオリジナリティがあれば話は別だ。
『僕は君たちに武器を配りたい』の著者である瀧本哲史氏は、人材のスペシャリティ(独自の価値ある存在)を次の6つに分けた。(1)トレーダー(営業)、(2)エキスパート(専門家)、(3)マーケター、(4)イノベーター(起業家)、(5)リーダー、(6)インベスター(投資家)。そしてこれからは(3)〜(6)、特に「業界の裏を読める」(6)の力を持て、と説いた。そのためには、自分を少しだけ取り換え困難で、価値ある存在に高めていかなければならない。
「戦略読書」とは、自らをコモディティにしないための読書法だ。「何を」「いつ」「どう」読むかを工夫すれば、自身のオリジナリティを育て、情報収集や知識会得の時間効率を上げることができる。そうすることで、「複雑で困難に満ちた」世の中において、新しいものを見出す視座を手にするのである。
読書の効用とは何だろう。新しい腹筋をつくり上げるために最低2カ月間、38万円がかかるとする。では新しい頭脳をつくり上げるには? 「丸2年間」でなんとかなる、というのが著者の見解である。つまり2年あれば、自己改造が可能ということだ。
2年で読む200冊が、その自己改造を実現する。かかる金額はまちまちだが、全部新刊を買っても20万円足らずだろう。もちろん時間はもっとかかる。本の厚みやスピードにもよるが、1冊平均4時間として、全部で800時間だ。だが通勤や通学でのスマートフォンの時間を、朝夕30分ずつ読書に充てるだけで、年500時間は捻出できる。あとはランチタイムに10分、寝る前に15分の読書を毎日続ければ、もう300時間強が生み出せるはずだ。
「戦略読書」は、しなやかで強靭なキャリア(人生)をもたらす。ここからは、「戦略読書」の具体的なメソッドを紹介する。
経営戦略とは、「その企業が持つ経営資源を、どの事業にどれだけ振り分けるかを決めること」である。
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