日本では今後数十年にわたって、先進国でも突出したスピードで生産年齢人口が減り、高齢化が進む。労働者1人、1時間あたりの社会保障費は現在の824円から、2060年には2150円まで増える。人口減少時代に変わったいま、社会保障費を確保するためにはGDPを少なくとも現状維持しなければならない。そこで必要となるのが、どの先進国よりも大きい「生産性」の改善だ。
ただし、生産性と一口にいっても、その意味合いは2つに分かれる。ひとつは単純な「生産性」、もうひとつが「労働生産性」である。生産性は、付加価値総額を総人口で割ることで算出できる「1人あたりのGDP」のことだ。一方労働生産性は、付加価値総額を労働者の数で割ることで導き出せるものである。したがってこの2つは、労働参加率(就労している国民の割合)を用いて次のような関係がある。
「生産性=労働生産性×労働参加率」
つまり、国全体の生産性を上げるには「労働生産性を上げるか」、「労働参加率を上げるか」の2つの方法があるということだ。
一般論として、労働参加率を上げるほうが容易である。確実にそして急激に生産年齢人口が減る日本で、アベノミクスが掲げた「女性や高齢者の活用」はまさにそのための施策だ。2011年から2018年にかけて日本の生産年齢人口は618万人減少した一方で、労働者の数は371万人増加している。その内訳を年齢別に見ると65歳以上が291万人、男女別に見ると女性が292万人を占める。
しかし、労働参加率がある程度まで上昇した現在、もはや労働生産性を高めることしか選択肢がない。
国によって労働生産性の水準は異なる。この違いはどこから生まれるのだろうか。まず、生産性は3つの要因に分けられる。人数や時間で測れる「人的資本の生産性」、設備投資などの「物的資本の生産性」、そしてブランド力やビジネスモデルの改革など人と設備投資で説明ができない要素すべてを含む「全要素生産性」だ。そして、この全要素生産性が長期的な経済成長を促し、国全体の生産性の違いを生む。人員や設備は変わっていなくても、資源配分の効率性を変えるだけで劇的に生産性が向上する。
国際競争力は世界第5位であるにもかかわらず日本の労働生産性は世界第28位で、大手先進国の中では最低の水準である。人材配分、産業構造自体が他国と比べて非効率だからだ。
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