LGBTとはレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の4つの頭文字を取った言葉である。レズビアンは自分のことを女性だと認識していて、同性の女性を好きになる「女性同性愛者」、同様にゲイは「男性同性愛者」、バイセクシュアルは女性も男性も好きになることがある「両性愛者」を指す。トランスジェンダーは、「生まれたときに割り当てられた性別と、自分の認識している性別が一致していない人」を指す。
このように、性のあり方が多数派に属さない人たちはセクシュアルマイノリティ(性的少数者)と呼ばれるが、L・G・B・Tの4つ以外にもさまざまな性のあり方を持つ人たちがいる。LGBTに「Q」を加え、LGBTQとする場合もある。この「Q」はクィア、またはクエスチョニングの頭文字である。クィアは「規範的な性のあり方以外のセクシュアリティ」、クエスチョニングは「自らの性のあり方等について特定の枠に属さない人、わからない人。典型的な男性・女性ではないと感じる人」を表す。
少し視点を変えてみると、「性別」ひとつとってもいくつかの要素に分けて考えられることがわかる。特に、セクシュアルマイノリティについて考える際は、次の4つに分解してみるとよい。
ひとつは「法律上の性別」だ。出生時に身体、性器の形等から医師などによって判別されて割り当てられ、役所に届けられる。次に、「性自認」がある。自分は「男である」、「女である」、もしくは「性別に関係のない生き方をしたい」など、自身の性別をどう認識しているかを表している。そして、「性表現」という要素。これは社会的にどのように振る舞うかというもので、一人称や服装などについてどのような性別の表現を行うかに関わっている。最後の要素は、「性的指向」である。自分の恋愛や性愛の感情がどの性別に向くか、あるいは向かないかを指す。
これらの要素から導き出される性のあり方は非常に多様であり、突き詰めていけば一人ひとり違うパターンなのではないかということも感じられる。
前述の4つの要素のうち、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字を取った言葉が「SOGI(ソジ)」だ。SOGIという属性は、セクシュアルマイノリティだけでなく、すべての人に関わるものだ。いわゆる〈多数派〉の異性愛者の男性であっても、性自認は「男性」で性的思考は「女性」に向く、というように表現することができるからである。ちなみに本書で取り上げられる「SOGIハラ」とは、性的指向や性自認のいずれか、もしくは両方に対するハラスメントを指す。SOGIは目に見えにくい属性なので、安易なレッテル貼り等によって「全ての人」に関わる問題となり得る。
セクシュアルマイノリティの人は特殊で、そうではない人は「普通」だと認識してしまう人は多い。それはマイノリティには特別な「名前」がつけられるからかもしれない。女性の医者のことを「女医」と呼ぶのと同じだ。しかし、セクシュアルマジョリティにもさまざまな名称はある。
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