SDGs(エスディージーズSustainable Development Goals ; 持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連総会において、世界193の国の全会一致で承認されたものである。
日本企業の経営者の多くは、利益を上げるというプロセスにおいて、社会に対して何らかの善をなすべきだという理念を持っている。こうした経営者の思考と実践に、SDGsは明確なフレームワークを与えてくれる。
SDGsの17の目標と169のターゲットは、『2030アジェンダ』というドキュメントの一部である。これは人類の共存戦略である「平和・開発・人権」という目標に、「環境・持続可能性」の要素を融合し、未来に対する合意として打ち立てられた画期的な文書だ。
SDGsの世界観は、次に挙げる4つのキーワードで表すことができる。
第1のキーワードは「すべての人が」である。これは「誰ひとり取り残さない」(no one will be left behind)という決意を表している。具体的には格差のない世界、障がい者やLGBTQ(QueerまたはQuestioning)といった人々の権利が蔑ろにされない、社会的少数者を含むすべての人々が社会参画できる世界を目指すことである。
第2のキーワードは「自分らしく」で、「より大きな自由」(in larger freedom)を意味する。同じ自由を表す言葉でも、Libertyが「他人に拘束されない」という意味であるのに対して、Freedomは「人生における選択肢が多いこと」を表している。これは「すべての人が、より多くの人生の選択肢を持つべきである」という思想を表している。
第3のキーワードは「よく生きる」だ。すべての生命が栄え、人々が身体的、精神的、社会的によく生きられる(well-being)という理想である。
第4のキーワードは「世代を超えて」である。これは、今日の世代と将来の世代(present and future generations)の両方のニーズを満たすという考え方を表している。
「世代を超えて、すべての人が、自分らしく、よく生きられる社会」――これこそSDGsが目指す、未来の世界像だ。
それぞれの目標とターゲットは、この世界観から演繹される形で理解されなければならない。逆に高齢化や廃プラスチック問題など、項目に入っていない課題についても、この世界観から考えれば適切な対処法が導き出されるだろう。
ビジネスにおけるSDGsへの取り組みでは、17の目標と169のターゲット(と魅力的なアイコン)にばかり目がいってしまいがちである。しかし、こうした根源的な世界観が理解されなければ、取り組む意義がないとすらいえる。
企業がSDGsを実装するためには、企業の存在意義がSDGsと重なることを明らかにする必要がある。
本書が提唱するのは、近江商人の(1)売り手よし(2)買い手よし(3)世間よしの「三方よし」に加え、サプライチェーン上の「作り手」に配慮をした(4)作り手よし、活動の舞台である「地球」が健康な状態であるという(5)地球よし、そして将来の世代に負の遺産を残さないという(6)未来よし、の「六方よし」だ。
企業の具体的な生存戦略という観点から、SDGsに取り組む意義について考えると、次の3点が挙げられる。
3,400冊以上の要約が楽しめる