コミュニティ・オーガナイジング

ほしい未来をみんなで創る5つのステップ
未読
コミュニティ・オーガナイジング
コミュニティ・オーガナイジング
ほしい未来をみんなで創る5つのステップ
未読
コミュニティ・オーガナイジング
出版社
出版日
2020年11月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「コミュニティ・オーガナイジング」とは、一言で表現すれば、仲間を集め、その輪を広げ、多くの人々が共に行動して社会変化を起こすことである。デモや署名活動を連想する人もいるかもしれないが、「コミュニティ・オーガナイジング」はそうした特定の行為を意味するのではなく、より広い分野で使える変化の起こし方・考え方だ。日本社会もふくめて世界の人々が昔から草の根で行ってきた「社会の変え方」を、理論的・体系的に学べるようにしたものといえるだろう。

これまでそうした社会活動に最も欠けていたのは、「戦略」ではないだろうか。なかでも「パワー」という考え方だ。問題は、多くは立場の弱い人に起こる。そうした人々にパワーを与えるためには、関わる人たちのパワーバランスを変える必要がある。そこでは、関係者の「関心」と「資源」を考慮に入れたしたたかな戦略が効果を発揮する。本書は、地域コミュニティの活動を想定しているが、そのアプローチはさまざまな組織で参考になるだろう。

本書は、コミュニティ・オーガナイジングについて、「昼休みの時間を自由に過ごす」ことをめざす、小学生たちのストーリーを通して紹介している。小学生が主人公なので、読者にもその理論が非常にわかりやすい。本書を通じて、コミュニティ・オーガナイジングに興味を持つ人が少しでも増えてほしいし、実践してみようという人も出てきてほしいと願う。

ライター画像
しいたに

著者

鎌田華乃子(かまた かのこ)
特定非営利活動法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン理事/共同創設者
神奈川県横浜市生まれ。子どもの頃から社会・環境問題に関心があったが、11年間の会社員生活の中で人々の生活を良くするためには市民社会が重要であることを痛感しハーバード大学ケネディスクールに留学しMaster in Public Administration(行政学修士)のプログラムを修了。卒業後ニューヨークにあるコミュニティ・オーガナイジング(CO)を実践する地域組織にて市民参加のさまざまな形を現場で学んだ後、2013年9月に帰国。特定非営利活動法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン(COJ)を2014年1月に仲間達と立ち上げ、ワークショップやコーチングを通じて、COの実践を広める活動を全国で行っている。ジェンダー・性暴力防止の運動にも携わる。現在ピッツバーグ大学社会学部博士課程にて社会運動に人々がなぜ参加しないのか、何が参加を促すか研究を行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    コミュニティ・オーガナイジングとは、人々が力を合わせて大きな力を生み出し、社会課題を解決することであり、その方法論をいう。
  • 要点
    2
    コミュニティ・オーガナイジングは、5つのステップから成る。共に行動を起こすためのストーリーを語る「パブリック・ナラティブ」、同志たちとの強い関係を作る「関係構築」、みんなの力が発揮できるようにする「チーム構築」、同志たちの持つものを生かして変化を起こす「戦略作り」、たくさんの人と行動してリーダーシップを育てる「アクション」だ。

要約

コミュニティ・オーガナイジングとは何か

社会を変えるために
Natee127/gettyimages

日本の学校教育では、行動の仕方を意図的に教えることはしていないだろう。しかも大人たちが「問題があっても行動しない」選択をしていたら、それを見ている子どもたちも「行動しない」ように育つものだ。日本で育った私たちには、社会的アクションの方法論や、それを学ぶ機会が不足している。

そこで役に立つのが、コミュニティ・オーガナイジングだ。コミュニティ・オーガナイジングとは、人々が力を合わせて大きな力を生み出し、社会課題を解決することであり、その方法論をいう。実際、日本でも、コミュニティ・オーガナイジングによって行動を起こす人たちが出てきた。

板橋区の小学校6年生の子どもたちの例を紹介しよう。子どもたちは、廃校跡のグラウンドで毎日サッカーをしていた。しかしある日突然、工事のためにボール遊びを禁止されてしまう。他の公園に行ってみたり、区内の公園を詳細に調べたりしたが、ルールや使用時間が決まっており、存分にサッカーができないことがわかった。

そこで子どもたちは、大人たちにヒントをもらいながら、区長へ手紙を書いたり、陳情書を書いて区議会に提出したりするといった、300日間にわたる戦いを繰り広げた。その結果、ボール遊びができる場所の確保に成功したのだ。

本書では、コミュニティ・オーガナイジングの実践について、ストーリー仕立てで書かれている。小学校5年生の女の子、カナメが学校で直面したある課題に対し、仲間とともにコミュニティ・オーガナイジングに挑むというストーリーだ。

スノーフレークリーダーシップで活動を広げる
Arthit_Longwilai/gettyimages

4月に5年生になったカナメの学校に、新しい教頭先生が着任した。教頭先生は、始業式のスピーチで「これから昼休みの時間を、全員が読書する時間にします」と発表した。

カナメは動揺した。カナメにとって昼休みとは、友達と過ごせる、大好きな時間である。嫌だなあ、と思いながら下校していると、近所に住む女性「ユキさん」に出会った。ユキさんは、社会を良くするための団体で、社会の問題を解決する方法を教えている人だ。

ユキさんに事情を話すと、「変えられる方法を私、知ってるよ」「これからカナメは、コミュニティ・オーガナイザーになるんだよ」と言う。興味を持ったカナメに、ユキさんは、「カナメの同志は誰?」と問いかける。同志とは、同じ困難に直面する人々のことだという。となると、カナメの同志は小学校の児童全員で、中心となるのは同級生である5年生だ。続いてユキさんはこう言った。「まずこの中心となる同志をオーガナイズすることに取り組んでみよう」

ユキさんは、学級委員や募金活動の委員長、物語『スイミー』を例に、コミュニティ・オーガナイジングのリーダーシップについて教えてくれた。こうしてカナメは、リーダーが他のリーダーを育成し、育成された人がさらに他のリーダーを育成する「スノーフレーク(雪の結晶)リーダーシップ」という形をめざすことになる。リーダーが他のリーダーを育成できるようになれば、たくさんの人が活動できるからだ。

【必読ポイント!】 コミュニティ・オーガナイジングの5つのステップ

ステップ1:パブリック・ナラティブ

コミュニティ・オーガナイジングは、大きく5つのステップに整理できる。ステップ1は、共に行動を起こすためのストーリーを語る「パブリック・ナラティブ」だ。

共に行動を起こすためには、まず「私のストーリー」を語るところから始まる。

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要約公開日 2021.04.10
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