日本の学校教育では、行動の仕方を意図的に教えることはしていないだろう。しかも大人たちが「問題があっても行動しない」選択をしていたら、それを見ている子どもたちも「行動しない」ように育つものだ。日本で育った私たちには、社会的アクションの方法論や、それを学ぶ機会が不足している。
そこで役に立つのが、コミュニティ・オーガナイジングだ。コミュニティ・オーガナイジングとは、人々が力を合わせて大きな力を生み出し、社会課題を解決することであり、その方法論をいう。実際、日本でも、コミュニティ・オーガナイジングによって行動を起こす人たちが出てきた。
板橋区の小学校6年生の子どもたちの例を紹介しよう。子どもたちは、廃校跡のグラウンドで毎日サッカーをしていた。しかしある日突然、工事のためにボール遊びを禁止されてしまう。他の公園に行ってみたり、区内の公園を詳細に調べたりしたが、ルールや使用時間が決まっており、存分にサッカーができないことがわかった。
そこで子どもたちは、大人たちにヒントをもらいながら、区長へ手紙を書いたり、陳情書を書いて区議会に提出したりするといった、300日間にわたる戦いを繰り広げた。その結果、ボール遊びができる場所の確保に成功したのだ。
本書では、コミュニティ・オーガナイジングの実践について、ストーリー仕立てで書かれている。小学校5年生の女の子、カナメが学校で直面したある課題に対し、仲間とともにコミュニティ・オーガナイジングに挑むというストーリーだ。
4月に5年生になったカナメの学校に、新しい教頭先生が着任した。教頭先生は、始業式のスピーチで「これから昼休みの時間を、全員が読書する時間にします」と発表した。
カナメは動揺した。カナメにとって昼休みとは、友達と過ごせる、大好きな時間である。嫌だなあ、と思いながら下校していると、近所に住む女性「ユキさん」に出会った。ユキさんは、社会を良くするための団体で、社会の問題を解決する方法を教えている人だ。
ユキさんに事情を話すと、「変えられる方法を私、知ってるよ」「これからカナメは、コミュニティ・オーガナイザーになるんだよ」と言う。興味を持ったカナメに、ユキさんは、「カナメの同志は誰?」と問いかける。同志とは、同じ困難に直面する人々のことだという。となると、カナメの同志は小学校の児童全員で、中心となるのは同級生である5年生だ。続いてユキさんはこう言った。「まずこの中心となる同志をオーガナイズすることに取り組んでみよう」
ユキさんは、学級委員や募金活動の委員長、物語『スイミー』を例に、コミュニティ・オーガナイジングのリーダーシップについて教えてくれた。こうしてカナメは、リーダーが他のリーダーを育成し、育成された人がさらに他のリーダーを育成する「スノーフレーク(雪の結晶)リーダーシップ」という形をめざすことになる。リーダーが他のリーダーを育成できるようになれば、たくさんの人が活動できるからだ。
コミュニティ・オーガナイジングは、大きく5つのステップに整理できる。ステップ1は、共に行動を起こすためのストーリーを語る「パブリック・ナラティブ」だ。
共に行動を起こすためには、まず「私のストーリー」を語るところから始まる。
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