いまこそ知りたいDX戦略

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出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2021年04月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

現在、日本では空前のDX(デジタルトランスフォーメーション)ブームが起こっている。読者の中にも、「会社にDX推進部ができた」あるいは「DXを進めるよう社長から指示を受けた」など、他人事ではない方もいるのではないだろうか。それにもかかわらず、多くの日本企業のDXが失敗に終わっている。実際、これまで100社以上の企業のDXに携わってきた著者は、数多くの場面で「何から着手していいのかわからない」「プロジェクトが途中で頓挫した」などといった失敗事例を目にしてきたという。なぜ、日本企業のDXは失敗するのか。

本書は、日本企業がDXの成功に至らない原因を3つの壁として定義し、その壁をこえる方法を提示してくれる。成功・失敗問わず、事例を数多く取り上げているため、「自分の業界に置き換えて考えると、こうなるかな」といったイメージが湧きやすい。章の最初に抽象化した主張を置き、後半に具体例を示すといった文章構成も、理解を助けてくれる。

DXによって、今後も業界地図は塗り替えられていくだろう。そんな時代においては、DXプロジェクトが企業の命運を握っているといっても過言ではない。なぜなら、本書によると、DXは根本的なビジネスモデルの変換を意味するものであり、競争優位性の確保・向上という点において非常に重要な要素だからだ。本書を手に取り、その大枠と本質をつかむことによって、DX推進の足掛かりとしていただきたい。

著者

石角友愛(いしずみ ともえ)
パロアルトインサイトCEO/AIビジネスデザイナー
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAIプロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテックや流通AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手がける。2021年4月より順天堂大学大学院客員教授(AI企業戦略)。毎日新聞「石角友愛のシリコンバレー通信」、ITメディア「石角友愛とめぐる、米国リテール最前線」など大手メディアでの寄稿連載を多く持ち最新のIT業界に関する情報を発信している。
著書に『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
パロアルトインサイトHP:https://www.paloaltoinsight.com/

本書の要点

  • 要点
    1
    DXの本質は、デジタル技術による根本的なビジネスモデルの変換、つまり会社のコアをデジタル化することだ。
  • 要点
    2
    DX推進には、「FOMOの壁」「POCの壁」「イントレプレナーの壁」と、大きな壁が3つ存在する。
  • 要点
    3
    「FOMOの壁」に直面している状況とは、何から手をつければいいかわからず、実行に移せない状況のことだ。まずはヒアリングを通して、「何をやりたいのか」「どんな課題を解決したいのか」を明確にしよう。

要約

そもそもDXとは何か?

会社のコアをデジタル化すること
metamorworks/gettyimages

多くの日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が失敗に終わっている。その最大の原因は、経営者や担当者が、DXのあるべき姿を正確にイメージできていないことだ。経営者や担当者のほとんどが、DXを、チャットボットの採用やインターネット上の決裁システムの導入など、単なるオペレーションへのネット活用やツール導入だと考えている。しかし本来のDX推進とは、そのような一面的なデジタル活用を指すものではない。

アメリカでは、DXを「第四次産業革命そのもの」と捉えている。第四次産業革命とは、主にクラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoT、AIが混ざりあうことによって生み出されるネットワーク効果や指数関数的な成長や変化を指す。これを企業にあてはめて考えると、DXとは、ツールの導入を行うといった局所的なIT導入のことではなく、デジタル技術を採用した根本的なビジネスモデルの変換を指すということになるだろう。

DXの本質は、根本的なビジネスモデルの変換、つまり、会社のコアをデジタル化することだ。そのため、DXは「会社にとってのコアの再定義」と「コアのデジタル化」から始めることとなる。

人や組織に関する変革

DXについてさらに理解を深めるために、「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」、そして「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の3つの違いについても説明したい。

デジタイゼーションは、「アナログからデジタルへの移行」のことだ。つまり、ツール導入による手作業の自動化やペーパーレス化などだ。「ハンコのデジタル化」などをイメージすればいいだろう。導入の対象は、主に社内の作業工程(会計、営業、カスタマーサポートなど)である。

デジタライゼーションは、「デジタル化されたデータを使用して、作業の進め方やビジネスモデルを変革すること」だ。ツール導入といった表面的な話ではなく、複合的で本質的なビジネスモデルとコアのデジタル化による変革を示す。

ここまで聞くと、「それこそがDXなのでは?」と思う方もいるかもしれない。しかし、デジタライゼーションとDXには決定的な違いがある。デジタイゼーションとデジタライゼーションが技術に関する変革を指すのに対し、DXは「主に人や組織に関する変革」を指すのだ。

ここでいう「人」とは、顧客・ユーザー・消費者・協力会社・社員などである。つまり企業のDXは、KPI(重要業績評価指標)や評価制度の見直し、抜本的な組織編成を伴うものであり、決して少人数のDXチームによる単一プロジェクトで実現できるものではない。

【必読ポイント!】DXの壁(1)何から手をつければいいかわからない

ヒアリングで課題を明確にする
ljubaphoto/gettyimages

著者の経営するパロアルトインサイトでは、これまで100社を超える企業と、DXに欠かせないAI導入の話を進めてきた。この経験から、DX推進には大きく3つの壁が存在することがわかっている。すなわち、「FOMOの壁」「POCの壁」「イントレプレナーの壁」だ。それぞれの壁について紹介していく。

まず、「FOMOの壁」だ。「FOMOの壁」に直面している状況とは、何から始めればいいかわからず、実行に移せない状況のことをいう。FOMOは、「Fear Of Missing Out:置いていかれることを恐れる」の頭文字をとった言葉だ。

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要約公開日 2021.06.11
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