最近、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を目にしない日はない。少し前に流行ったAI(Artificial Intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)といった言葉を飲みこむ勢いである。
一般的に「DX」として取り上げられるのは、AIやIoT、ブロックチェーン、VR(Virtual Reality:仮想現実)・AR(Augmented Reality:拡張現実)の活用、はたまた自動運転や遠隔操作までさまざまだ。
これらの共通点は、文字通り「デジタルで変わる」という点である。DXとは、遠隔地からロボットを動かしたり、大量のデータから何かを予測したりするようなものだけではない。ペーパーレス化やリモートワークも、「デジタルで変わる」という定義に従えば、まぎれもなくDXに当てはまる。
DXを推進するためには、「DXで何を実現するのか」をまず考える必要がある。それがなければ、どんなツールや技術も宝の持ち腐れだ。
どこから始めるかを考えるうえでは、短期と中長期に分ける必要がある。短期において成果が見込めるのは、「既存事業の磨き込み」だ。今まで行なってきたことを、DXを用いることで、より早く正確に行えるようにする。つまり過去の事実・データをもとに、より効率的に動けるような手助けをしてもらうのである。
そのためには既存の業務について、できるかできないかはいったん脇に置き、どこかに無駄はないか、人間よりデジタルのほうが正確にできそうなところはないか、あのデータをデジタル化したらもっと使えないか、といった視点で洗い直してみるべきだ。効率化や収益性向上の可能性を全社で洗い出すことが、短期的なDX推進のスタートとなる。
これからの企業において、「DXは全社員に関わるものである」という考え方に、異論をはさむ人は少ないだろう。にもかかわらず、DXの推進活動はそう簡単に進まない。「何をするのかいまいちピンと来ない」「うちの部門は現場が納得しない」といったような不満の声が、あちこちからわき上がってくるはずだ。いわゆる、総論賛成・各論反対の状態である。
しかしながら、こうした混沌とした状況からのスタートは、むしろ当たり前だと思うべきだ。企業を変えるだけのインパクトがDXにはあるのだから、その可能性が大きければ大きいほど、社内に不安の声があがるのは当然である。
プロジェクトの立ち上げに際して全社員を集め、「DXにより今までなかった顧客体験を実現する」などとカッコよくまとめられたプレゼン資料を発表して、大きく打ち上げるのは賛成しない。かえって各論反対の声を大きくしてしまう可能性がある。
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