かつて、資本家が労働者を使役して利益を得ることは「搾取」と呼ばれ、不当な営みだとみなされていた。今では、労働者に十分な賃金を与えずに酷使する企業は、「ブラック企業」として糾弾される。だが、経営者や株主であること自体を責められることはない。
1990年代にソ連をはじめとする社会主義国が崩壊したことによって、資本主義には出口がないことが明らかになった。これを資本主義リアリズムという。これは、資本主義が唯一の存続可能な政治・経済的制度であり、その代替物を想像することすら不可能だという意識が広まった状態を指す。
資本主義に対抗する方法として、「加速主義」が提唱されている。加速主義は、資本主義を加速させることによりその極限で資本主義からの脱却を図る思想だ。資本主義の代替が存在しない以上、資本主義を追求することでしかそれを乗り越えることはできないという考えである。後述するAIの普及とベーシックインカム(BI)の給付による脱労働社会の到来は、加速主義のひとつの形である。
年輩者に比べて、若い世代はそこまで労働に価値を置かなくなってきている。今後、AIの普及によって、この傾向はますます加速するだろう。
しかし、私たちは脱労働社会をただ待ち焦がれていればいいわけではない。今の資本主義には明らかな不正がある。
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