世界中の企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組み、デジタルを使って新たなビジネスモデルを構築していっている。しかし日本はその波に乗り遅れてしまった。2001年のIT基本法施行から20年経っても、新型コロナのオンライン申請すら満足に対応できない。平井デジタル改革担当相も「デジタル敗戦」を宣言し、仕切りなおしを始めた。
GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)のような世界的企業はいま、圧倒的なパワーと洗練されたビジネスモデルで世界を席捲している。しかし日本にも、まだチャンスは残されている。そのチャンスのカギとなるのが「スケールフリーネットワーク」だ。日本の「ものづくり」と「スケールフリーネットワーク」が有機的につながれば、日本が大逆転する可能性すらある。
スケールフリーネットワークは、米ノートルダム大学のアルバート=ラズロ・バラバシ教授らが発見した現象だ。1998年、彼らはウェブの地図を作ることにした。ウェブページの作者は自分のウェブページの内容に応じて、好きにほかのページのリンクを貼ることで、巨大なネットワークを形成する。そこでネットワークのリンク構造を調査したところ、なんと0.01%に満たない少数のページに、膨大なリンクが集中していることがわかった。
これはバラバシ教授たちにとっては驚きだった。というのも彼らは当初、ウェブページの形は「ランダムネットワーク」になると予想していたからである。ランダムネットワークの場合、「平均的なノードにはこれくらいのリンク数がある」という「スケール(尺度)」があるのだが、現実はそうではなかった。つまりスケールフリーだったのだ。
ランダムネットワークが、都市間をつなぐ高速道路網のようなものだとすると、スケールフリーネットワークの構造は航空網に似ている。巨大なハブ空港に、多くの小空港(飛行空港)が接続しているようなイメージだ。
GAFAの躍進も、スケールフリーネットワークの力が関係している。彼らはマネタイズを先行させるのではなく、ネットワークの成長を先行した。たとえばグーグルのマネタイズは創業から4年後だし、フェイスブックも3年後だ。彼らはまずスケールフリー構造を確立し、そこで自らが巨大なハブとなることで、莫大な収益を上げるようになったのである。
ドイツはいま政府主導、産官学一体で、「インダストリー4.0」を進めている。これは工場内の装置をインターネットにつなぎ、スマート工場化をめざすもので、さまざまな要素が含まれる取り組みだが、その本質は製造業のスケールフリーネットワーク化にあると言っていいだろう。
著者の島田氏は2014年、シーメンスのドイツ本社に着任し、デジタルファクトリー担当としてインダストリー4.0に取り組んだ。そのときドイツの担当者は口を揃えて、インターネットでの敗北と、インターネットで起きたことを次は産業界で起こすと語っていた。インターネットでアメリカの後塵を拝したことは、ドイツにとっては痛恨の出来事だった。しかし彼らは自らの間違いを認めて、逆転を狙っている。
島田氏が日本のエンジニアと話すときも、同じ話が出てくるという。しかし本気で取り組む人はいない。なぜなら
3,400冊以上の要約が楽しめる