COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックが終息した後の世界はどうなるべきだろうか。
マクロ規模のリセットは、現代社会を形作る三つの力の流れの中で起きる。
一つ目の力は相互依存だ。グローバリゼーションの技術の進歩は、社会システムの深いところまでつながった世界を生み出した。その結果、経済、地政学、社会、環境それぞれのリスクが他のリスクを刺激し、飛び火効果を生む可能性を持っている。
二つ目の力がスピードだ。生活のペースがどんどん速くなる世界において、スピードに執着した「急ぐ文化」があらゆる面に現れる。新型コロナウイルスの感染拡大も驚異的なスピードで広がった。政策決定者は、より短時間で決断を迫られるようになっている。
そして三つ目が複雑性だ。複雑な社会は、構成要素の間に明確な因果関係がなく、予測することが難しい。それゆえ物事は悪い方へ転がる。複雑性は人々の物事の理解を超えたことを引き起こす。
歴史を見ると、感染症は国の経済や社会機構を組み直す大きな契機となってきた。過去のパンデミックでは、終息後に資本家がコストをかけてでも再建を目指すため、労働者側の力が強まった。現代では、世界の大半で高齢化が進んでいるし、テクノロジーによって構図は変わるだろう。新型コロナウイルスには未知の部分が多すぎるため、リスクを的確に評価するのも難しい。
2020年に世界を直撃したパンデミックは、記録に残る限り最も打撃が大きく、最も短期間のうちにおきた。世界中の政府が熟慮を重ね、経済の大部分を閉鎖する決断を下した。特に被害が大きかった労働市場においては、世界の失業率は各国で二桁かそれを超える記録的な数字になることは間違いない。
ポストコロナ時代の経済成長率は、復興により一時的に目を見張る数字になり得るが、人口減少や高齢化と相まって低成長時代がほぼ確実に訪れる。このような今こそ社会全体が一度立ち止まり、経済をより公平で環境に優しい形に生まれ変わらせるチャンスだ。
私たちの幸福度は、一人当たりGDPで定義される富のレベルだけでは正確に測ることはできない。私たちが幸福かどうかは、物質的な豊かさよりも、利用可能な医療サービスの充実度や社会構造の安定性といった無形の要素にかかっている。それに気づけば、環境保護や他人への寛容といったものが新しい社会規範の特徴になっていくかもしれない。
新型コロナウイルス感染症は、経済や地政学的な激動にも匹敵する大変動を社会にもたらした。少なくとも短期的には不平等を悪化させることが予想される。人々の命を救い続ける看護師や介護士、経済を動かす配達員や倉庫の労働者などの労働階級は、リスクに見合う報酬を得られていない。ただし、危機を乗り越えた後でこの認識が世の中に広まり、不平等縮小の方向に動く可能性もある。
パンデミック収束後に社会が直面する最も深刻なリスクの一つが社会不安だ。反政府抗議運動やデモは以前より増加傾向にあった。パンデミック封じ込めのために冬眠していた社会的不満が、さらに勢いを増して噴出する恐れがある。
社会不安が増大すると、相対的に政府の役割は大きくなる。新型コロナウイルスほどの重大な外的ショックに対しては、市場原理に基づく対策では限界がある。実際、多くの国で景気刺激策や国民への現金給付などが行われた。ステークホルダー資本主義が優位となり、企業幹部は強まる政府の介入にも適応しなければならない。医療や環境の回復力を高めるために、増税する可能性も高いだろう。
グローバリゼーションによって何億もの人々が貧困から脱出したが、何年も前からその有効性が疑問視されている。
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