Amazon創業者のジェフ・ベゾスは1994年、シアトルにある自宅のガレージでインターネット書店事業を始め、翌95年にAmazon.comをスタートさせた。
アマゾンジャパンの設立が進められたのは、それから5年後のことだ。著者は、P&Gジャパンから創業間もないアマゾンジャパンに移り、2001年から社長を務めている。
そこで出会ったのが「Day1(デイ・ワン)」という言葉だ。Day1とは、Amazonの事業が急速に成長・発展するなかで、常に社員が意識している言葉であり姿勢である。日本語だと「毎日がはじまりの日」といったニュアンスだ。
人は、組織のルールやプロセス、データなどにその活動が縛られるようになると、当初の目的を忘れてしまうものだ。この現象が組織内に広がっていくと、企業はDay2という衰退の状態に陥ってしまう。
Day1は、ベゾスの長期思考と徹底したお客様を起点にして考える姿勢であると同時に、「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」というAmazonのミッションと共にある言葉だ。お客様は常に課題を抱えている。目の前にある課題に応えることができたとしても、必ず次の課題が出てくるものだ。だからこそ、お客様という存在をしっかりと把握して、お客様が抱えている課題に対して価値あるソリューションを創造し、喜ばれるサービスを提供し続けよう――そう考えて行動することが、Day1であることにつながる。
Amazonの仕事の根本にあるのは、お客様のご不便を解消する方法を、お客様が気づかないところまで先回りして発見し、サービス化していくことだ。そのためには、常にお客様のことを考え続けなければならない。この、お客様に関することが頭から離れない状態を、AmazonではCustomer Obsession(カスタマー・オブセッション)という言葉で共有している。
カスタマー・オブセッションは、AmazonのLeadership Principles(リーダーシップ・プリンシプル、以下LPと略記)の筆頭にくるものだ。LPとは、14条からなる、アマゾニアン(Amazonの社員)の行動指針である。カスタマー・オブセッションの追求こそがアマゾニアンの仕事の原点であり、Day1であり続けるために最も重要な姿勢だ。
LPでは、カスタマー・オブセッションについて以下のように記載されている。
Customer Obsession(カスタマー・オブセッション):リーダーはお客様を起点に考え行動します。お客様から信頼を獲得し、維持していくために全力を尽くします。リーダーは競合にも注意は払いますが、何よりもお客様を中心に考えることにこだわります。
Amazonは、経営が次第に軌道に乗り始めた2000年以降、企業理念や組織文化の価値観を重んじるとともに、それらを形骸化させないための策を講じるようになった。LPを創り上げたのも、そのための策のひとつだ。「ミッションを具現化していくうえで、どんな人材とどのような行動が望ましいのか」を考え続けてLPを創り上げた。そして、unless you know better onesという言葉が添えられているとおり、必要に応じて改定を続けている。
Amazonの会議は、お客様を中心に据え、差別化やコスト、効果などについてとことん議論し、回答を見つけ出していく場と位置づけられている。こうした議論においても、LPが指針となる。たとえばLPのうちのひとつ、Dive deep(リーダーは常にすべての業務に気を配り、詳細な点についても把握する)の概念にあてはめて、「この部分はもっと調査が必要では?」「お客様のニーズを表層的に捉えていないか?」といった観点から議論を進めるのだ。
新サービス立ち上げの企画に承認を求める際のルールとしては、working backwards(ワーキング・バックワーズ)がある。
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