著者は、パニック障害による発作に襲われて、救急車で病院に運ばれたことがある。身体からの「小さな悲鳴」が聞こえていたのに、「ちょっと疲れているだけ」「栄養ドリンクを飲めば大丈夫」と無視しているうちに、発作という「大きな悲鳴」になってしまった。
朝目覚めたときから疲れを感じる、イライラすることが多くなった、なぜか涙が出る、お酒の量が増えた、動悸がする、人と会うのが億劫になった……このように、身体の小さな悲鳴は、日常のちょっとした行動や気持ちの中に紛れている。心と身体の声に耳を傾け、早めにキャッチして対処するようにしてほしい。
ストレス反応には段階があり、それぞれに応じた対処が必要である。
たとえば、人前でスピーチをすることになったとしよう。スピーチは、ストレスを引き起こす原因、「ストレッサー」になりえる。だが、スピーチをすると聞いて「目立つチャンスだ」とワクワクする人もいれば、「緊張する」と憂鬱に感じる人もいるはずだ。同じストレッサーでも、それを受け止める「認知」は人によって違う。
スピーチを憂鬱に感じた人は、スピーチの時間が近づくとドキドキし、手のひらに汗をかき、ソワソワしてウロウロしはじめ、ますます憂鬱になって逃げだしたくなるかもしれない。この場合、スピーチが近づいてドキドキすることを「情動的興奮」、その後、手のひらに汗をかいたりウロウロしたりすることを「身体的興奮」という。ストレス反応は、ストレッサー→認知→情動的興奮→身体的興奮という段階を経る。
「ストレッサー」の対処法は「改善」だ。ここでは、「スピーチの練習をする」「他の人に代わってもらう」などが該当する。
次の「認知」では、「受け止め方を変える」というアプローチが有効だ。スピーチを「上達する機会」「多くの人に自分を知ってもらうチャンス」などと、前向きに受け止める。
続いての「情動的興奮」や「身体的興奮」には、リラクゼーションがいい。深呼吸やストレッチなどを行い、ストレス反応に対処する。
ストレッサーには、コントロールできるものとできないものがある。取引先の相手にミスを何度も指摘されて怖くなり、苦痛を感じているとしよう。「改善」としては、ベテランの先輩に同行訪問してもらう、ミスを繰り返さないように丁寧に仕事をする、場合によっては担当を代えてもらうことなどが挙げられる。一方で、取引先の相手に、ミスを指摘しないようにお願いすることはできない。
まずは対処できるものを明確することが大切だ。
あなたが何かにストレスを感じたとき、本当の原因は別にあるかもしれない。
3,400冊以上の要約が楽しめる