お金とは、価値を数えたり測ったりする「数学的な道具」である。お金が登場する前の社会では、商品の取引は物々交換であった。1袋の穀物を、鍋や豆、1日分の畑仕事と直接交換する、といった具合だ。
しかし物々交換は、双方が相手のほしいものを持っていなければ成り立たない。複数の人が取引しようとすると、かなり複雑な売買ネットワークが必要となる。そこで、複雑な取引を調整するために金融システムが発明された。お金は取引を仲介する手段であり、その価値はほかの商品との比較で決められる。つまりお金というものは、それと交換できる商品やサービスと照らし合わせることで、初めて価値を測ることができる相対的なものである。
そして、お金の価値は時間とともに絶えず変動し、必ず主観が伴う。ボトル入りの水が、清流のそばに住む人にとっては価値がなくとも、砂漠のど真ん中で死にかけている人にとっては100万ドルの価値を持つこともある。
資産管理の技術は、価値の差分や変動を見極めるところにある。保有する財産を売り払い、負債を時価ですべて清算した際に残る金額の「純資産」を考えるとわかりやすい。
お金を商品やサービスと交換可能な「品物」と捉えることが、お金を数学的に考えるための第一歩なのである。
元本が一定の成長率のもと、2倍になるまでの年数を知っておくと便利だ。その年数を暗算する簡易的な方法が「72の法則」である。72の法則は、15世紀にルカ・パチョーリが著書『スムマ』で記述して以来、脈々と受け継がれている投資の知恵だ。
法則はいたってシンプルで、72を成長率(または預金や投資の利率)で割るだけだ。これで、初期投資額が2倍になるまでに何年かかるかが弾き出される。年利9%なら72÷9=8なので、8年かかる計算だ。
この法則はあくまで概算であり、最も正確なのは金利が5〜10%前後のときだけである。しかし、何世紀も前から多くの資本家や投資家が活用してきた事実から、標準的な状況では役に立つだろう。
初期投資額1000ポンドを1年で100万ポンドにするにはどうしたらいいか。
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