超加速経済アフリカ

LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図
未読
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超加速経済アフリカ
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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2021年06月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

皆さんのアフリカに対する印象、認識はどのようなものだろう。貧困と飢餓、海賊被害、砂漠、大自然、野生動物、そんなイメージではないだろうか。政変や内乱、自衛隊の海外派遣などのニュースもあったため、治安が悪い発展途上国が多いイメージかもしれない。しかし、アフリカの実態は予想を良い意味で大きく裏切るものだった。

本書はアフリカ最前線のファクトフルネスを教えてくれる良書だ。最初のファクトフルネスとして、アフリカ大陸の大きさ、ナイジェリアの中位年齢、アフリカにおける2050年の人口予測の3つが登場する。まずアフリカ大陸の大きさは私たちの想像を大きく超える。私たちが普段よく目にする世界地図はアフリカの本当の大きさを表していない。メルカトル図法は緯度が高い国を大きく表示するため、赤道に近い国は相対的に小さく表示される。アフリカ大陸の実際の大きさは、「アメリカと中国とインドとヨーロッパと日本を全部入れてもまだ余る」のだ。

アフリカは今、高度経済成長期にさしかかろうとしている。日本の50年から60年前、つまり日本が過去に通ってきた道をいま辿っているのだ。人口急増による仕事不足やインフラ整備の遅れなど、日本が知っている課題が数多く存在する。しかも、規制が少ないアフリカ各国では、最新技術を取り入れることができる。

本書は私たちが持つアフリカの認識を一気にアップデートさせてくれる。アフリカの巨大な可能性とともに、近未来のビジネス地図にふれてみてほしい。

著者

椿進(つばき すすむ)
Asia Africa Investment and Consulting(AAIC)代表パートナーを務めるアジア・アフリカのスペシャリスト。東京大学教養学部卒業。ボストン コンサルティング グループ(BCG)のパートナー・マネージングダイレクターとして、事業戦略、M&A戦略、新事業立ち上げ、グローバリゼーション等のプロジェクトを実施。2008年に現AAICを創業し、代表パートナーに就任。中国・東南アジア・インド・中東・アフリカ等の新興国において、新規事業育成、市場参入支援等をコンサルティングと投資を通じて実施。日本初のアフリカ・ファンドも運用。ルワンダでは東京ドーム40個分の広さのマカデミアナッツ農園も手がけている。執筆、講演多数。後進の育成にも力を注ぎ、ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学大学院教授として新興国ビジネス事例研究を教えている。

本書の要点

  • 要点
    1
    2020年の日本の中位年齢は48.4歳で、アフリカ全土の中位年齢は19.7歳である。アフリカの全人口は約13億人だが、2050年には約25億人となり、世界人口の約25%を占めるまでに成長する見込みだ。
  • 要点
    2
    アフリカ全土の電気普及率は4割程度だが、アフリカの成人はほぼ100%ケータイやスマホを所持している。またキャッシュレスの普及率も9割を超える。アフリカでは既存インフラや既得権益者などが少ないため、新進技術が一足飛びに普及する。また現在は日本企業の再進出が増えている。

要約

日本が知らないアフリカ

広大なアフリカ

アフリカの本当の広大さを知ると、誰もが驚くだろう。メルカトル図法の世界地図では高緯度の地域が大きく見え、赤道に近いアフリカは相対的に小さく見える。そのため多くの日本人はアフリカの本当の広さを知らないが、比較してみるとよくわかる。アフリカ大陸の南北の距離は約8000km、東京からシアトルが約7687km。アフリカの東西は約7400kmで、東京からドバイまでが約7935kmだ。東京からシアトルやドバイまでの距離と同じくらいだと考えると、「とりあえずアフリカに拠点を1つ置こう」という発想が、いかに的外れかがわかるだろう。

アフリカ大陸の面積はインドの10倍で、日本の80倍にあたる。アフリカ大陸とは、その中に米国と中国とインドと欧州とメキシコと日本が全部入るほど、実に巨大な大陸なのだ。

人も若いアフリカ
Richard Drury/gettyimages

アフリカの人々の年齢が圧倒的に若いことも、日本では知られていないファクトだ。2020年の日本の中位年齢は48.4歳であるのに対し、アフリカ全土の中位年齢は19.7歳である。アフリカの全人口は約13億人だが、最も人口が多いナイジェリアの中位年齢は18.1歳、ケニアは20.1歳と、若年人口が圧倒的に多い。その理由は、医療と衛生環境の整備によって乳幼児の死亡率が急激に低下し、人口を賄えるだけの食料が確保されたためだ。

少し前のアフリカでは自宅出産が普通だったため、出産時の妊婦と新生児の死亡率が高かった。女性1人が平均6~7人出産しても、大人になるのは2~3人で、これは明治の日本と同程度の水準だった。それが改善され、人口が爆発的に増加し、いまや人口抑制政策を取る国も多い。

2050年にはアフリカの人口が約25億人(世界の4人に1人)になると予想される。都市化が進むと増加の勢いは落ちるが、日本をはるかに上回る人口と若さは、国家運営の舵取りを間違えなければ大きなパワーを秘めている。

都市化が進むアフリカ

アフリカの農村の人口爆発は人の動きを変えた。農地の広さは変わらないが子供は増えるため、第二子や第三子は都市部に出ていく。しかし都市部にも仕事がない。ケニアでも大学に行けるのは1割程度だが、卒業後3年以内に就職できるのは約半数であり、圧倒的に仕事不足なのだ。しかも多くはブルーカラーで、何らかのスキルを持つスキルドワーカーは少ない。

都市化率に目を向けると、南アフリカが最も進んでおり、67%が都市部に住む。またアフリカ最大の2億人の人口とGDPを誇るナイジェリアは都市化率52%である。都市化率28%のケニアのほか、タンザニアやウガンダなどの東アフリカの国も注目エリアだ。都市化率43%のエジプト、64%のモロッコも、早くから産業が立ち上がっている国だ。南アフリカ、ナイジェリア、ケニア、エジプトの4国は、アフリカの主要国として覚えておきたい。

アフリカはどんどん豊かになっている

スマホを持つマサイ族

アフリカでは電設工事が進んでいるが、半分程度の人は電気がない家に住んでいる。日本の約100年前と事情が似ている。しかし当時の日本とは全く違う面もある。

それはアフリカのほぼ全ての成人がスマホやケータイを持っているという点だ。

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要約公開日 2021.07.19
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