サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学
サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学
サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学
出版社
新星出版社

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出版日
2021年03月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

スーパーで会計待ちの列に並んでいる間に、レジ横に陳列させた乾電池を思わずカゴに入れてしまう。インターネットショッピングで「〇時まで」「数量限定」といった言葉に惹かれて、気が付けば注文ボタンをクリックしている。本書で紹介されているこうした例には、誰にでも思い当たるところがあるはずだ。

私たちの日々の生活は意思決定の連続だ。伝統的な経済学では人間は合理的にふるまうものだと見なされてきたが、人が日常でとる行動には、非合理的な行動も多分に含まれている。本書が解説する行動経済学は、伝統的な経済学では説明のつかなかった人間の行動に焦点を当てる。人の考え方のくせを知ることは、マーケティングに直結する。この理論を応用すれば、周囲の人に望ましい行動をとるように促すことも可能だ。人との接し方や、チームビルディングに悩む人にとっても、行動経済学の理論は役に立つ。

また、日常生活で自分が非合理的判断を下す可能性を自覚し、どうすれば合理的な意思決定ができるかを知ることは、自分のプライベートを充実されることにもつながるだろう。無駄な出費を抑えたり、目標達成のために自分を動かしたりするためのヒントも、本書から見つけることができる。カラーのイラストが豊富に掲載されているので、眺めているだけでも行動経済学の基本的な考え方を知ることができる。まさに「サクッとわかる」という名にふさわしい本書は、入門にうってつけの一冊だ。

著者

阿部誠(あべ まこと)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授。1991年マサチューセッツ工科大学博士号(Ph.D.)取得後、2004年から現職。ノーベル経済学賞受賞者との共著も含めて、マーケティング学術雑誌に論文を多数掲載。行動経済学の研究対象である人間の知覚バイアスや選好逆転に着目し、計量・統計モデルを用いて得られた分析結果をマーケティングに応用する研究を行っている。2003年にJournal of Marketing Educationからアジア太平洋地域の大学のマーケティング研究者第1位に選ばれる。主な著書に『大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる』『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(共にKADOKAWA)、共著書に『(新版)マーケティング・サイエンス入門:市場対応の科学的マネジメント』(有斐閣)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間は常に合理的な判断をすると見なす伝統的な経済学では、人間の行動に矛盾が生じる。それをカバーするために登場したのが「行動経済学」だ。
  • 要点
    2
    ヒューリスティックは深く考える必要のない場面で効力を発揮する便利な思考プロセスだが、偏った考え方(バイアス)によって常に適切な判断に結びつくとは限らない。
  • 要点
    3
    人は損得を合理的に見分けることができない。得をしたときの喜びよりも損をしたときの悲しみの方が大きいため、損失を避けようとする心理が働きやすい。
  • 要点
    4
    消費者が日常生活で触れるさまざまな場面で、行動経済学を活用したマーケティングが行われている。

要約

行動経済学の基礎

人間は合理的な判断をすると考える、伝統的な経済学

伝統的な経済学は、「超合理的」「超自制的」「超利己的」の3つの行動原理によって意思決定する人間を「ホモ・エコノミカス=経済人」と定義し、人間は常に自分の利益を最大化する合理的な選択をすると考えていた。さまざまな選択肢の中から最も高い効用をもたらすものを選び(超合理的)、現在と将来の利益をはかりにかけた上で、将来得られる利益が大きければそれを優先する(超自制的)。そして、自分が不利益を被らない限り、起こした行動によって他人が不幸になってもかまわない(超利己的)と考える。企業も消費者も「自分のため」に努力すれば、需要と供給のバランスで価格が決定し、最適な状態になる。

たとえば、結婚式に参列する女性が、インターネットなどで比較検討して安価で質の良いものを比較検討し、お目当てのドレスを着るためにダイエットをしようとするのは、合理的な行動だといえる。

新しい学問、行動経済学
© 松尾達

しかし、本当に私たちは常に合理的に行動するだろうか。先の結婚式の例でいえば、1万5000円のドレスを買おうとしていたところ、「2着で1万9800円」という表示が目に入り、思わず2着買ってしまうというのはよくある話だ。結婚式では1着しかドレスを着られないのだから、2着購入するのは合理的な行動だとはいえない。あるいは、体に悪いとわかっていてもタバコを吸ってしまうように、もっともメリットが高い商品を常に選ぶわけではない。周囲の人間を気にして、もっとも利益を追求する方法ではない選択をすることもあるだろう。

このように、経済学との矛盾が生じる人間の行動を解明するために登場したのが「行動経済学」だ。「ホモ・エコノミカス」のような存在を想定するのではなく、実際の人間の行動をもとに理論を形成するのが特徴だ。

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要約公開日 2021.09.07
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2021 松尾達 All Rights Reserved. 本文の著作権を含む知的所有権は株式会社フライヤー、イラストの著作権を含む知的所有権は松尾達に帰属し、事前に株式会社フライヤー、松尾達への書面による承諾を得ることなく本資料およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
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