伝統的な経済学は、「超合理的」「超自制的」「超利己的」の3つの行動原理によって意思決定する人間を「ホモ・エコノミカス=経済人」と定義し、人間は常に自分の利益を最大化する合理的な選択をすると考えていた。さまざまな選択肢の中から最も高い効用をもたらすものを選び(超合理的)、現在と将来の利益をはかりにかけた上で、将来得られる利益が大きければそれを優先する(超自制的)。そして、自分が不利益を被らない限り、起こした行動によって他人が不幸になってもかまわない(超利己的)と考える。企業も消費者も「自分のため」に努力すれば、需要と供給のバランスで価格が決定し、最適な状態になる。
たとえば、結婚式に参列する女性が、インターネットなどで比較検討して安価で質の良いものを比較検討し、お目当てのドレスを着るためにダイエットをしようとするのは、合理的な行動だといえる。
しかし、本当に私たちは常に合理的に行動するだろうか。先の結婚式の例でいえば、1万5000円のドレスを買おうとしていたところ、「2着で1万9800円」という表示が目に入り、思わず2着買ってしまうというのはよくある話だ。結婚式では1着しかドレスを着られないのだから、2着購入するのは合理的な行動だとはいえない。あるいは、体に悪いとわかっていてもタバコを吸ってしまうように、もっともメリットが高い商品を常に選ぶわけではない。周囲の人間を気にして、もっとも利益を追求する方法ではない選択をすることもあるだろう。
このように、経済学との矛盾が生じる人間の行動を解明するために登場したのが「行動経済学」だ。「ホモ・エコノミカス」のような存在を想定するのではなく、実際の人間の行動をもとに理論を形成するのが特徴だ。
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