話を整理するとき、三流は思いついたまま話し、二流はモレなくダブりなく話し、一流は大胆に削って真芯にフォーカスして話す。
ロジカルシンキングで使われるMECE(ミーシー)は、「モレなく、ダブりなく」という意味だ。たとえば全国47都道府県を調査するとして、45都道府県だけ調べるとモレが生じていることになる。年代別調査で、10代、20代、30代、40代、若年層という括りで分けると、若年層が他の世代とダブっている。モレやダブりがあると信ぴょう性に欠くため、情報を整理する際、MECEになっていることは重要だ。
だが説明においては、「モレなく、ダブりなく」は必ずしも必要ではない。自分の特徴をモレなくダブりなく伝えようとするあまり、面接の自己紹介に15分かかったとしたら、合格することはできないだろう。レストランでおすすめのワインを聞いたとき、店員さんが棚にあるワインを隅から隅まで説明しようとしたら、「そこまで求めてないんだけど」と思うのではないだろうか。それなのに、すべてを説明しようとするビジネスパーソンは多いものだ。
わかりやすく伝えるにあたって、モレなくダブりなく整理することは必要だ。しかし本当に大事なのは、整理したあとに大胆に削り、「真芯」、つまり一番伝えたいことや相手が知りたいことにフォーカスを当てることである。「もし、説明時間が10秒しかなかったとしたら……」「あえて1行で説明するとしたら……」と考えて、伝える内容を精査しよう。
イメージを持っていない相手に説明する場合、三流はあいまいに説明し、二流は詳しく長く説明し、一流は「対比」で説明する。
相手がイメージを持っていない対象について説明するのはかなり難しい。あなたは、仮想通貨をまったく知らない人に、その概要をうまく説明できるだろうか。そんなとき一流は、法定通貨と対比して仮想通貨の特徴を説明する。同様に「食物繊維が20グラムとれるサプリ」と言われてもピンとこない相手には、「サツマイモ1本で5グラムの食物繊維がとれます。このサプリは1回で20グラムとれます」といった具合に、サツマイモと対比すればいい。
商品について説明したいなら、ビフォー・アフターの対比も効果的だ。「これまでのアプリケーションは10万人にアプローチするのが限界でした。しかし、今回開発したアプリケーションは100万人にアプローチできます」と、前後で対比すれば、そのすごさが伝わりやすくなる。
人間は、具体的にイメージできないと行動できないものだ。対比を使えば、相手をうまく動かすことができる。
手順を説明するとき、三流は口頭で説明し、二流は分厚い資料で説明し、一流は図解で説明する。
著者は20代の頃、会社のオペレーションをまとめるために3カ月かけて手順書を作ったことがある。出来上がったのは、500ページにわたって文字がつめこまれた超力作だ。だがその手順書は、誰にも読んでもらえなかった。著者自身、マニュアルや手順書は一切読まないタイプなのに、なぜかこのような形式にしてしまった。
手順を説明するときに使うべきは、文字ではなく「図解」だ。図解なら、細かい文字よりも圧倒的に理解しやすく、視覚に訴えて情報処理を助けることができる。
図解で説明するポイントは、「図から書くこと」である。手順、流れ、ステップといった大枠から始め、そこに文字を入れること。人物像を描くときと同じで、輪郭から描いた後に細かいところを埋めていけばいい。
説明の準備をするとき、三流はプロセスから考えはじめ、二流は結論から考えはじめ、一流は相手の頭の中から考えはじめる。
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