脳のパフォーマンスを最大まで引き出す

神・時間術

未読
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神・時間術
出版社
出版日
2017年04月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「仕事を持ち帰って夜中にやろうとしたが、ほとんど進まず朝になってしまった……」という経験はないだろうか。普段なら難なくこなせる仕事でも、取り組む時間帯や環境によって、はかどったりはかどらなかったりする。1日は等しく24時間だが、その流れ方には緩急があるようだ。そして自分の心身の状態によっても、パフォーマンスは大きく変わる。

昨今「時間」の価値が見直される中、様々な「時間術」の本が出版されている。本書『神・時間術』が主眼に置いているのは「集中力」である。集中力の高まる時間帯に集中力を要する仕事を行い、そうでない時間帯には集中力をさほど要さない仕事をする。時間帯と本人の状態を掛け合わせることで仕事効率は2倍、3倍にも上がり、結果的に自由な時間を創り出せるということである。

この時間術に行き着いたきっかけは、著者のアメリカ留学時代に遡る。アメリカ人の同僚たちは、5時きっかりに仕事を終わらせ、ワークライフバランスを取りながら人生を謳歌していた。著者は彼らの仕事ぶりをつぶさに観察した結果、「集中力」が仕事効率の鍵であることに気がついたという。

本書は『アウトプット大全』『インプット大全』『ブレイン メンタル 強化大全』など、数々のベストセラーを生み出してきた精神科医・樺沢紫苑氏によって2017年に刊行された。氏の著作はこれまでフライヤーの要約でも多数紹介され、「樺沢メソッド」に馴染みのある方も多いかもしれない。心身の状態を整え、集中力を高めることで得られる「神・時間術」。読了後はきっと試したくてうずうずしているはずだ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

樺沢紫苑(かばさわ しおん)
1965年、札幌生まれ。札幌医科大学医学部卒。2004年から米国シカゴのイリノイ大学精神科に3年間留学の後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。

「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンに、Facebookやメールマガジン、Twitter、Youtube(チャンネル登録者30万人超)などインターネット媒体を駆使し、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識、情報をわかりやすく発信している。

80万部を突破した『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)の大全シリーズのほか、ベストセラー多数。累計発行部数は180万部。

本書の要点

  • 要点
    1
    「神・時間術」では「集中力」を基準に仕事を振り分ける。時間帯によって変化する集中力に合わせた作業を行えば、効率を2倍にすることができる。
  • 要点
    2
    1日の中で最も集中力が高まる時間は起床後の2〜3時間である。そのため午前中は「集中仕事」や勉強に使うべきである。
  • 要点
    3
    午後の集中力低下は昼休みにセロトニンを活性させることで回復できる。セロトニン活性化には外食ランチや近くの公園で食べることが望ましい。
  • 要点
    4
    創出した「自由時間」に仕事をしてはいけない。「自己投資」「能動的娯楽」「楽しむ」ことに使うべきである。

要約

【必読ポイント!】「神・時間術」の原則

仕事は「集中力」を基準に振り分ける

人間の脳は、起きてから2〜3時間のパフォーマンスが1日で最も高い。脳が疲れておらず、脳内も非常に整理された状態にあるからだ。「脳のゴールデンタイム」と呼ばれるこの時間帯は、論理的な作業や執筆、語学学習といった高い集中力を要する仕事を行うのに適している。 脳科学的に最高のパフォーマンスを発揮できる時間帯に、それに合った仕事をすると、仕事の効率を2倍以上に高めることが可能だ。朝の1時間は夜の1時間の4倍に匹敵する。

日々の仕事には、集中力を要する「集中仕事」と、いつでもできる「非集中仕事」がある。それぞれの作業を時間帯によっていかに適切に振り分けるかが、1日の仕事量を左右する。「集中仕事」には、文章や重要な資料の作成、英語資料の読み書きなどがある 。一方「非集中仕事」は、メールや電話の対応、コピー取り、打ち合わせなどだ。集中力の高い時間に「集中仕事」をし、「非集中仕事」は、脳が疲れていてもできる時間に行うのが良い。

「集中力の高い時間」とは、「起床後の2〜3時間」「休憩した直後」「就業間際」「締め切りの前日」などである。集中力を「高めよう」とする必要はない。「集中力の高い時間に集中力の必要な仕事をする」ことで2倍以上の効率を得ることができるようになる。

集中力を「リセット」して仕事量を増やす
Naeblys/gettyimages

通常、時間は「線」のように流れる「一次元」として考えられる。通勤時間の1時間にゲームではなく読書するというような有意義な時間の置き換えが従来の「一次元時間術」である。しかし、これだけで数倍の仕事量をこなすことは不可能だ 。

本書で紹介する時間術は、横軸に「時間」、縦軸に「集中力」を置くことで、時間の進行が「線」でなく「面」になる 「二次元時間術」である。集中力の高い時間帯に集中力が求められる作業を行うことで、この「面積」は大きくなる。つまり、仕事量を増やすことができるという発想だ。

「集中力(仕事効率)」×「時間」=「仕事量」。集中力が上がれば、同じ時間内 にこなせる仕事量は2倍にも3倍にも増える。これが「二次元時間術」である。

「自己投資」に時間を使う

時間術で捻出した「自由時間」を何に使うべきか。多くの人が「仕事」と言うかもしれないが、それはいいことではない。

せっかく作り出した自由時間でさらに仕事をする、ということを繰り返すと、結局1日のほとんどが「仕事」の予定で埋めつくされ、コマネズミのように働き続ける羽目になる。 それよりも「自己投資」や「能動的娯楽」、そして「楽しむ」ために活用したほうがいい。

娯楽には「受動的娯楽」と「能動的娯楽」の2つがある。テレビやゲームなどに代表される「受動的娯楽」は時間の浪費につながるが、読書、スポーツ、楽器の演奏、ボードゲームなどの「能動的娯楽」は自己投資であり、楽しみながら自己成長ができる。

仕事のスキルアップのために「自己投資」をすれば、同じ仕事をより短時間で片づけることができるようになる。するとさらに自由時間が生まれ、それを自己投資に使うことができる。自己投資と自己成長、時間創出の無限スパイラルが生まれるのである。

集中力を高める「最高の脳」の作り方

15・45・90 の法則
martin-dm/gettyimages

人間の身体には「体内時計」があり、非常に正確なリズムを刻んでいる。有名なものには24時間単位の「サーカディアンリズム」がある。毎日同じ時間に眠気を感じたり、空腹を感じたりするというものだ。もう少し短いものでは90分周期の「ウルトラディアンリズム」である。人間の脳は約90分の周期で覚醒度が変化しており、覚醒度の高い90分と眠気の強い20分が交互に訪れる。

人間の脳の集中力は海の波のように高まったり低くなったりというリズムを繰り返している。この集中力のリズムに上手に乗ることが、集中力を最大限活用する仕事術の基本である。著者は人間の集中できる時間単位は「15分」「45分」「90分」の3つあると考え、これを「15・45・90 の法則」と呼んでいる。

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要約公開日 2021.10.03
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