2007年に創業したボーダレスグループは、ソーシャルビジネスしかやらない会社だ。2021年4月現在、世界15か国で40の事業を展開している。ソーシャルビジネスが取り扱うのは、「儲からない」とマーケットから放置されている社会問題だ。
資本主義社会におけるビジネスの本質は、効率の追求である。しかしソーシャルビジネスは、効率性の低さを理由に対象とされにくい人々や地域の問題を扱う。そうした非効率も含めて、経済性が成り立つようビジネスをリデザインしなければならない。
社会問題の解決は、政府や自治体、NPOの役割だと考える人も多いだろう。しかし、持続的な社会問題の解決は、ビジネスのリデザインにより消費者に受け入れられる仕組みが必要となる。慈善活動や公的な取り組みだけでは限界があるのも事実だ。
ソーシャルビジネスは、非効率を含んでビジネスをデザインする必要があるため、従来型のビジネスより難易度は上がる。ボーダレス・ジャパンは、社会起業家の数だけ社会問題は解決するとの前提に立ち、自らを社会起業家のためのプラットフォームと定義する。
社会問題を解決したいという想いがあっても、ノウハウも自信もないと踏み出せずにいる人もいるだろう。そこでボーダレスグループでは、新卒、第二新卒の場合には、3人一組に1000万円を渡し、1年間起業を体験する場を提供している。1年後には、自らのビジネスプランを完成させ、グループ各社の全社長が参加する「社長会」で、全会一致の賛同が得られたら、会社が設立され、自身の描いたプランを実装していくこととなる。
ボーダレスグループは、事業開始後も伴走型の支援を継続し、マーケティングやバックオフィス業務をサポートしたりして、社会起業家たちを全面的に支える。
ボーダレスグループの資金源は、グループ各社の余剰利益である。余剰利益をグループで共通のポケット=財布に入れ、新たなソーシャルビジネスへの支援に充てているのだ。なんとか利益を出せるようになった起業家は、自分が受けた恩を次のチャレンジャーに送る。この仕組みは「恩送り」と呼ばれ、グループ内の相互扶助エコシステムの柱となっている。
一方、ボーダレスグループの各社の経営は独立している。採用や投資、報酬などは各社の裁量に任されている。ボーダレスグループの重要事項は、全社長が参加する「社長会」で決定される。各社社長は等しく1票を持ち、全員賛成が原則だ。一人でも反対すれば却下され、やり直しとなる。
事業が黒字化した後も、営業利益が対前年度比で3カ月続けて下回ると、社長はリバイバルプランを示し、他の社長からの指摘や助言を踏まえて案を練り上げていく。経営者同士のコミュニケーションを重視し、全社長によるオンライン会議は月1、2回開かれ、孤立を避けながら自立を促している。
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