SFプロトタイピング

SFからイノベーションを生み出す新戦略
未読
SFプロトタイピング
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SFからイノベーションを生み出す新戦略
未読
SFプロトタイピング
出版社
出版日
2021年06月02日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

SF(サイエンス・フィクション)という言葉を聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるだろうか。近未来のどこかの都市で、非常に便利な暮らしを送るイメージを持つ人もいれば、社会が徹底的に崩壊したディストピアをイメージする人もいるだろう。また、SFは論文と異なり、学力や知識にあまり関係なく、より多くの人が読むことができる。

「ドラえもん」や映画「マッドマックス」の作品に触れたときのワクワク感を、そのままビジネスに生かせる――。それがSFプロトタイピングの最も魅力的な特徴だ。近年ビジネスシーンで注目される手法である。

SFプロトタイピングが概念として登場し始めたのは2010年代でまだ歴史が浅く、メソッドとしては発展途上にある。しかしながら、SFの力を借りたプロジェクトは国内外で広がりを見せている。

SFの物語は、ガジェットとして新しい製品を創造するだけでなく、その後の社会課題や哲学的問題にまで踏み込む可能性も秘める。まだここにない未来の物語を組み立てる過程で生まれる発想力は、事業の新規提案の触媒となることや、教育的効果も期待される。本書は、各地で実践されるSFプロトタイピングに関する事例をまとめることで、この新しい手法がどのように未来を開拓しつつあるのかを展望しようとするものである。

SFファンや文学好きはもちろん、「新しい発想」に悩むビジネスパーソンも、本書を一読の上、SFの秘める力を自らの創造性へとつなげていただきたい。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

宮本道人 (みやもと どうじん)監修・編著
1989年生まれ。科学文化作家、応用文学者。筑波大学システム情報系研究員、株式会社ゼロアイデア代表取締役、博士(理学、東京大学)。編著『プレイヤーはどこへ行くのか――デジタルゲームへの批評的接近』、原案担当漫画連載「教養知識としてのAI」(人工知能学会誌)、対談連載「VRメディア評論」(日本バーチャルリアリティ学会誌)など。『ユリイカ』『現代思想』『実験医学』などに寄稿。原作担当漫画「Her Tastes」は2020年、国立台湾美術館に招待展示された。

難波優輝 (なんば ゆうき)編著
1994年生まれ。美学者、批評家、SF研究者。修士(文学、神戸大学)。専門は分析美学とポピュラーカルチャーの哲学。近著に『ポルノグラフィの何がわるいのか』(修士論文)、「SFの未来予測はつねに間違っていて、だから正しい」(「UNLEASH」)、「キャラクタの前で」(草野原々「大絶滅恐竜タイムウォーズ」解説)。短篇に「『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延」(『SFマガジン』)がある。『ユリイカ』『フィルカル』『ヱクリヲ』などに寄稿。

大澤博隆 (おおさわ ひろたか)編著
1982年生まれ。筑波大学システム情報系助教・HAI研究室主宰者、日本SF作家クラブ理事、博士(工学、慶應義塾大学)。専門はヒューマンエージェントインタラクションおよび社会的知能。JST RISTEX HITEプログラム「想像力のアップデート:人工知能のデザインフィクション」リーダー。共著に『人狼知能――だます・見破る・説得する人工知能』『人とロボットの〈間〉をデザインする』『AIと人類は共存できるか?』『信頼を考える――リヴァイアサンから人工知能まで』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    SFプロトタイピングとは、サイエンス・フィクション的な発想をもとに、まだ実現していないビジョンの試作品=プロトタイプを作ることで、他者と未来像を議論・共有するためのメソッドである。新しい事業や製品の提案を促進する効果が見込める。
  • 要点
    2
    SFにはスペキュラティブ=思弁的な側面がある。新たなガジェットを創造する際、その機能だけではなく、それが社会・生活・倫理に与える影響と変容した世界を考えることで、人々の価値観の変化や問題提起を促す。

要約

【必読ポイント!】 SFプロトタイピングの登場

SFプロトタイピングとは

SFプロトタイピングとは「サイエンス・フィクション的な発想をもとに、まだ実現していないビジョンの試作品=プロトタイプを作ることで、他者と未来像を議論・共有するためのメソッド」だ。

作られるプロトタイプには製品、街、社会などを表す「ガジェット」や、特定の意志や感情を持った「キャラクター」視点の考察、そうしたキャラクターたちが繰り広げるストーリーである「プロット」のシミュレーションが含まれる。

SFプロトタイピングは、起こる出来事から逆算して今を考えるという「バックキャスティング」的な方法である。

バックキャスティングの対義語「フォアキャスティング」による未来予測は、現在の科学技術などから演繹して、実現可能性の高い未来を想定する。しかし、コロナ禍を予想できなかったように、この手法では予想の斜め上の未来は想定しにくい。

自ら予想外の未来を想定することは、大きな社会変化が起きたときに生き抜くことにつながる。ビジネスパーソンにとっては、事業や製品を新たに創り出す局面で、SFプロトタイピングの発想力は武器となるだろう。

未知や価値を思い描く
HiddenCatch/gettyimages

SFと聞いて、なんとなく未来っぽいガジェットを思い浮かべる人は多いかもしれない。SFとは本来「スペキュラティブ」、すなわち「思弁的」なものであり、現実から外れた未知や価値を思い描くものだ。例えば空飛ぶクルマを描く場合、その機能だけではなく、それが社会・生活・倫理に与える影響と変容した世界を思弁する、つまり脳内で論理的に考えることが求められる。

SFが生み出すこの発想力を積極的に利用しようとする試みがSFプロトタイピングである。インテルに所属する未来学者、ブライアン・デイビッド・ジョンソンが2011年に著書でこの概念を紹介して以降、類似の取り組みがSFプロトタイピングと呼ばれるようになった。

とはいえSFプロトタイピングというジャンルはこれから開拓されていく段階にあるため、一つの確立した方法論はまだない。さまざまなプロジェクトで生まれる試行錯誤を一つにまとめるのが、本書の役割である。

未来へのビジョンをつくる

三菱総合研究所シニアプロデューサーの藤本敦也氏は、SFプロトタイピングの効用を、形式の似た他の手法と比較する。積み上げ型で考える手法のマクロトレンド分析やシナリオ・プランニングは、確度は高い半面、面白い発想が出にくい。

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要約公開日 2021.10.13
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