平成から令和に変わるとき、平成元年と平成最後の年の世界の時価総額ランキングが話題となった。平成元年は、日本企業が世界の上位を席巻していたが、平成が終わる頃にTOP50にランクインしたのはトヨタ自動車1社のみであった。
さらに衝撃的なことに、2020年にGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)にMicrosoftを加えた5社の時価総額合計が、日本の東証一部2170社の時価総額合計を上回った。GAFAと日本の大手企業の売上高にそこまでの差はない。ところが、日本の大手企業の多くは売上高のほうが時価総額よりも大きい。一方、GAFAのような巨大テクノロジー企業は、売上よりも時価総額のほうが5~10倍程度大きいのだ。売上高は「企業の今の力」を表し、時価総額は「投資家が考える企業の将来の力」を表している。日本企業は投資家に「今はいいけど将来性がない」と評価されているということになる。つまり、株式市場に「日本企業よ、イノベーション力を向上せよ」と言われている状況にあるのだ。
本書のキーワードであるイノベーションは、「技術革新」のことだと誤解されがちだ。数十年前のこの誤訳が、「技術革新がないとイノベーションが起こせない」という誤った認識を広げ、日本企業を「目的なき技術革新」に奔走させたと言っても過言ではない。
イノベーションの正しい意味は「新結合」であり、「これまで組み合わせたことのない要素を組み合わせることによって新たな価値を創造すること」を指す。
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