私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか?

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私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか?
出版社
出版日
2021年06月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「中東」と聞いたら、どんな光景を思い浮かべるだろうか。

白い民族衣装に身を包んだ「石油王」? 砂漠とラクダ? それとも、豪華絢爛なモスクや、高級なスポーツカーを乗り回す王族?

本書は、そんな中東への偏見と誤解を解き、現地の空気感をよく伝えてくれる頼もしいガイドとなるだろう。

著者の鷹鳥屋明氏は、自ら中東の民族衣装の着こなしや礼儀作法、歴史を学び、体当たりで現地に飛び込んできた。そうした厚みとSNSにおける活動が評価されている、中東で最もその名をよく知られた日本人の一人である。

本書では、鷹鳥屋氏が体験した中東ならではのエキセントリックなエピソードを紹介しつつ、中東の現状を、そこで暮らす人たちの目線を交えつつ、俯瞰的に語ったものだ。中東という地域を間近に見てきた日本人が語る読み物として、面白くもあり教科書としても役立つ、稀有な書籍となっている。

ビジネスの観点からいえば、中東はいわゆるオイルマネーで潤う魅力的な市場に映るかもしれない。しかし同時に、そこは日本とかけ離れた歴史と価値観に彩られた別世界だ。本書を通じてその基礎を理解し、その上で中東の人々や文化に触れれば、きっと意外な共通点やビジネスチャンスも見えてくることだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

鷹鳥屋明(たかとりや あきら)
1985年大分生まれ、日本と中東を行き来して働くサラリーマン。大分舞鶴高校、筑波大学卒業後、メーカー、商社、NGO職員、ベンチャーと働く間に外交イベント、ビジネスを通じてアラブ、中東世界に深く関わりSNS上でアラブ人約10万人からフォローされる。中東各国で過ごした経験から現地で行われるイベントの企画、随行等も行う。本人もオタクであり中東のオタク文化に関して造詣が深く日本のコンテンツを中東に広げるべく活動を行う。母方の実家が鷹鳥屋神社であり、鷹鳥屋明を名乗る。

本書の要点

  • 要点
    1
    中東に「石油王」は存在しない。確かに王族は力を持っており、石油による資金は国家を潤している。しかし関連企業は基本的に国営だ。石油の恩恵は、税金の低さや社会福祉を通じて国民に広く行き渡っている。
  • 要点
    2
    中東には王族が多数存在し、その数はサウジアラビアだけでも2万人から3万人とも言われる。彼らは独自の特権を持っており、ときにそれを利用したビジネスを展開してもいる。
  • 要点
    3
    国家を運営する王族にとって、国民の満足度は自らの立場に関わる死活問題である。人口の増加に伴う失業対策、石油依存からの脱却など、独自の問題を解決するべく、さまざまな工夫が行われている。

要約

【必読ポイント!】 中東で有名になった日本人

中東にまつわるトラブルバスター

著者の鷹鳥屋明氏は、普段は日本の企業で働いている。派遣やIP(知的財産)関係の事業戦略を担当し、グッズの制作・販売など、日本のコンテンツを海外に展開する手伝いをしている。

いろいろな企業や政府からの中東に関する悩み相談を請け負ったり、駆け込み寺のように案件処理を担当したりすることも多い。中東にまつわる「トラブルバスター」として知られている。扱うジャンルはエンターテインメント系・調査・観光・日用品・食品・医薬品・化粧品・テクノロジーなど幅広い。

商品やイベントを持っていくときに、現地の風習に適した表現になっているか、現地の法律、実践的な商慣習はどうなっているのか、詐欺案件の看破まで、さまざまなアドバイスを行っている。

中東で最もその名を知られた日本人のひとりとして、王族ともさまざまな付き合いがあるなど、独自の立場を確立した存在だ。

いかにして有名になったのか
Akira Takatoriya

最初のキャリアは、日立製作所からスタートした。財務として5年間、エクセルとにらめっこしていた頃は、会社のお荷物にならないように日々もがく社員の一人だった。

そんな折、日本の外務省とサウジアラビア青年福祉庁(当時)というサウジアラビア政府組織が実施している外交イベント「日本サウジ青年交流団」に参加する機会があった。そこで生まれて初めてサウジアラビアの標準的な民族衣装を買うことになる。

著者は民族衣装を着て大使館のパーティーなどに呼ばれるうちに「アラブの民族衣装を着ている姿は素晴らしいからもっと多くの人に見てほしい」と現地の有名なインフルエンサーから誘われるようになった。勧められてインスタグラムを始めた。

それからしばらくして、東京で大雪が降った日があった。その日に浅草で、サウジアラビアの民族衣装を着て雪の中を猛スピードで滑って遊ぶ動画を、インスタグラムに上げた。

その動画が有名になり、一時は7万人を超えるフォロワーを獲得。さまざまな媒体から声を掛けてもらうようになり、CMなどにも出演するようになっていった。そうした活動と経験を続けていくうち、中東に詳しい日本人として知られるようになっていった。

著者はあくまでタイミングがよかっただけ、日本人がこの姿をしても許される土壌を作ってくれた先人たちのおかげだと語る。また、著者はもともと歴史が好きだったため、その深い知識で現地の人々とも表面だけでない話をすることができた。どのような国であっても、自国の歴史について詳しい人は信頼したくなるものだ。また、国ごとに微妙に異なる服装や礼儀作法も、すべて苦労して身につけたという。

自身が「オタク」だったことも要因と言えるだろう。日本が誇るアニメやマンガは、中東でも人気が高い。同じ作品について知っていることで、胸襟を開いて語り合うことができた。

知られざる「中東」の世界

そもそも「中東」とは?
FrankRamspott /gettyimages

中東とは、もともとヨーロッパから見た位置関係を示した地政学用語だ。

もとはイギリスで定義されたもので、オスマン帝国(トルコ周辺)を「近東」、それより東からインド手前までのアラブ諸国を「中東」、それより東を「極東」と表現していた。日本が「極東」と呼ばれているのも、ヨーロッパ基準で地図の東にあるためである。

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要約公開日 2021.10.20
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