はじめての機械学習
はじめての機械学習
中学数学でわかるAIのエッセンス
はじめての機械学習
出版社
出版日
2021年07月20日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

2010年後半から、急速な盛り上がりを見せている第三次AIブームは現在もなお続いている。その中核を担う技術として注目を集める機械学習は、大量のデータによって機械がみずから学習し、分類や予測などのタスクを行うために生かされている。今やあらゆる分野で活用されるようになり、日常生活でも当たり前のように使われるようになってきた。これからは誰しもAIや機械学習と無縁ではいられないだろう。

しかし、実際のところ、「機械学習」とは何で、どんな仕組みで動いているのかと言われると、答えられる人のほうが少ないはずだ。本書は、まだ機械学習について詳しくないという人に向けて、中学数学の知識の範囲で、機械学習の基礎的な知識について解説している。難解な数式の代わりに、アート作品や映画、小説などのたとえ話を交えながら、簡単な数字に置き換えて説明されていて、初心者でもイメージが持ちやすい。機械学習にはこれから触れ始めるという人にもわかりやすい記述で安心して読み進めることができる。

k近傍法という簡単な手法から、徐々に難解な手法の解説へと移り、最終的には「深層学習」や「量子計算機」など、近年注目が集まっているテーマにも言及している。これから勉強を始めたいという学生の方から、機械学習の基礎を押さえたいと思うビジネスパーソンまで、幅広い方におすすめできる一冊だ。あらゆる業界に影響を及ぼす機械学習の基礎概念を、本書で学んでみてはいかがだろうか。

著者

田口善弘(たぐち よしひろ)
1961年、東京生まれ。中央大学理工学部教授。1995年に刊行した『砂時計の七不思議――粉粒体の動力学』 (中公新書)で第12回(1996年) 講談社科学出版賞受賞。その後、機械学習などを応用したバイオインフォマティクスの研究を行い、最近はテンソル分解というもので変数選択する(!)という研究に嵌まっており、その成果を2019年9月にシュプリンガー社から『Unsupervised Feature Extraction Applied to Bioinformatics』(単著)として出版した。2020年に『生命はデジタルでできている』(講談社ブルーバックス)を刊行。

本書の要点

  • 要点
    1
    機械学習の本質は「関係性の予測」だ。相互の関係性がわからない情報をもとに、関係性がわかりやすい「数」を作り、人間の理解を助けてくれる。
  • 要点
    2
    深層学習によって、画像処理は従来では考えられないほどの性能に達した。しかし、じつのところなぜうまくいっているのか、うまい説明ができない。
  • 要点
    3
    量子計算機は従来の方法では途方もない時間がかかる問題を、一瞬で終わらせる可能性を秘めている。

要約

機械学習で使われる様々な手法

いちばん簡単な機械学習の手法——k近傍法
JGalione/gettyimages

あなたは学校の先生で、「なるべく落第者を出さないこと」が使命だったとしよう。そこで、「授業についてこられない学生に補習をしたい」と思うわけだが、その年の成績が出る前に、落第しそうな生徒にだけ補習をするのは、意外に難しいものだ。

「授業がわからなかった人は補習に出るように」と呼びかけても、やる気のある生徒だけが出席し、本当に授業についてこられなかった生徒は出席しない。成績全体が悪い生徒を指名して出席させる形式にも問題がある。補習科目だけは得意だという生徒を指名してしまうかもしれないし、成績全体が平均でも、その科目だけが苦手な生徒も取りこぼしてしまう可能性もあるからだ。

授業が進んでから落第しそうな生徒がわかるのではもう遅い。できることなら、数回であっても、学生にわからない授業を聞かせたくない。授業よりも前に、誰がその授業をわからないのか知れるのが理想だ。

ここであなたが利用するデータは、「前年同じ授業を受けていた学生の成績一覧」と、「これから受け持つクラスの学生の過去の成績一覧」だ。前年のクラスでは、すでに誰が落第か確定している。前年のクラスの学生と、これから受け持つクラスの学生の過去の成績一覧を比べて、なるべくほかの教科の成績が似ている学生を、k人ずつ選ぶことにする。そうして、これから受け持つクラスの全員に、前年の学生をk人ずつ紐づけた後に、その人たちの合否の数を調べる。k人中不合格が合格を上回ったら、その学生を不合格候補者として補習クラスに呼ぶことにする。

この方法は「k近傍法」と呼ばれる、機械学習の方法だ。このやり方をすれば、どの科目の成績を、あなたがこれから受け持つ科目の合否予測に使うのか、自分では何も考えなくても合否を予想してもらうことができる。これが、機械学習の重要な性質だ。

3次元を2次元にする影絵のごとく——主成分分析

先ほどはわかりやすく「似ている」と表現したが、k近傍法は、

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要約公開日 2021.10.07
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