本書は、「ヘルジャパンに生きる女子は息してるだけで偉い」と言い切る著者が、女子が身を守るための「言葉の護身術」をまとめたものである。
「ヘルジャパンを女性が生き延びるための実用書」であり、日常で出会う「モヤモヤ」を言葉にしている。誰かの発言に「モヤる」時、なぜそんなにモヤるのか、ひょっとしたら自分に問題があるのではないかと思考が迷子になった経験は誰しもあるだろう。そのモヤモヤの正体がわかると、自分の感覚に自信を持つことができる。その場で適切に言い返すことができれば、自信にもつながる。
著者自身も、若い時はナメられ、セクハラやパワハラの対象にされても「自分が悪いんだ」と思っていたという。「女は笑顔で愛想よく」と呪いをかけられ、わきまえた女として振る舞っていた。そうしているうちに感覚がマヒして、不眠や過食嘔吐などにも悩まされていた。フェミニズムとの出会いによって呪いの正体がわかり、「怒ってよかったんだ」ということに気づいた。
本書には、女性たちが元気にすこやかに暮らすために、世の中にはびこる呪いをぶちのめす「言葉の武器」がつまっている。
会社でリーダーに抜擢された女性から、「『おじさん転がすの上手いよね』と男の同期に言われ、ショックで何も言い返せなかった」という報告があった。著者はそれに対して、「『私が男だったら言うか?』と胸ぐらをつかんでシュレッダーにかけたい案件」と怒る。
男性だったら「優秀だ」と普通に言われるのに、女性の場合は実力や努力が正当に評価されない。「どうせズルい手を使ったんだろ」と決めつけられる。これこそ「ヘルジャパンの男尊女卑仕草」だ。「今はもう女性差別なんてない」「気にしすぎでは」と本気で言う男性陣は、気にせずにいられることが特権だと気づくべきである。
このような揶揄をされた女性の中には、自分の態度に問題があるのかと悩む人もいるだろう。しかし言われた側ではなく発言する側に問題がある。迷った時は「それ私が男だったら言うか?」という視点で考えることを勧める。たとえば、若い男性の営業マンが体育会系であることを評価されて上司に気に入られても、「男を使った」「若い男は得だよな」などとは言われない。「女の実力を認めたくない」というミソジニー(女性嫌悪)を無自覚にまきちらす人々は、女性は言い返してこないと思って、ナメているのである。
「おじさん転がすの上手いよね」と言われた際に、笑顔で対応してはいけない。その代わり、ハシビロコウのような真顔で「え、どういう意味ですか?」と返してみる。立場的に強く出られない場合は、「そういうこと言う男性、多いですよね……」と苦虫を噛み潰したような顔をしてみよう。こういう反応をすることで、自分の発言のおかしさに相手も気がつくかもしれない。
このような発言をするのは男性に限らない。
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