モヤる言葉、ヤバイ人から心を守る

言葉の護身術

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出版社
出版日
2023年06月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「女子力磨けば結婚できるよ」「私だったら笑顔でかわすけど」……。本書には日常生活で出会う「モヤる言葉」や「ヤバイ人」へ、瞬発力をもって対応するためのコツが書かれている。なにか「モヤッ」とした際にとっさにやりすごしてしまい、後から思いだして引きずることもある要約者には、非常に有益な内容であった。

「ルッキズム」や「善意をベースにしたお節介」など様々なトピックスが展開されている。自分が被害者になるケースだけでなく、自分自身が「モヤる言葉」を発する、あるいは「ヤバイ人」になってしまうことへの抑止力にもなると感じた。その意味では老若男女問わず刺さるところがあるだろう。

フェミニズムがベースにありながら、多彩な切り口で現実に起きがちな種々の問題を扱っている。近寄りがたいように感じるかもしれないが、そんなことはない。「ヘルジャパン(男尊女卑がはびこる日本のこと)」や「膝パーカッション(何度も膝を打つほど賛同すること)」といった著者独特の造語が使われ、懐かしい漫画やアニメのキャラクターになぞらえるなど、とても軽快な文体で書かれている。ぐいぐいと読み進めることができるだろう。

蔓延するセクハラや女性蔑視発言などに対して、終わらない戦いに無力さを感じる時もある。しかし著者は「時代は確実に変化している」と断言して、頑張るための背中を押してくれる。「一人一人の声が社会を変えていく」という実感をこめて書かれた本書は、まさしく、「女性が生き延びるための実用書」なのだ。

※本要約は、過去に作成した要約を最新版に合わせて一部再編集したものです。

ライター画像
河合美緒

著者

作家。神戸生まれ。オタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』でデビュー。同作はTVドラマ化・漫画化もされた。
著書に『生きづらくて死にそうだったから、いろいろやってみました。』(講談社)、『自分も傷つきたくないけど、他人も傷つけたくないあなたへ』(KADOKAWA)、『ヘルジャパンを女が自由に楽しく生き延びる方法』(幻冬舎文庫)、共著に『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか!?』(KADOKAWA)他、多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書は、男尊女卑がはびこる「ヘルジャパン」を女性が生き延びるための実用書であり、「モヤる言葉」や「ヤバイ人」に対応するための「言葉の護身術」が書かれている。
  • 要点
    2
    女性の昇進を揶揄してくる人がいる。自分の態度が問題なのかと悩む人もいるだろう。しかし問題があるのは100%、発言する側だ。それでも迷った際には、「それ私が男だったら言うか?」という視点で考えてみよう。
  • 要点
    3
    突然説教をしてくる人々は、自分が気持ちよくなりたいだけなので、笑顔で返すことで調子に乗らせてはいけない。女性は「反射的に笑顔を出すクセ」をやめよう。

要約

女子がもっと生きやすくなってほしい

言葉の護身術

本書は、「ヘルジャパンに生きる女子は息してるだけで偉い」と言い切る著者が、女子が身を守るための「言葉の護身術」をまとめたものである。

「ヘルジャパンを女性が生き延びるための実用書」であり、日常で出会う「モヤモヤ」を言葉にしている。誰かの発言に「モヤる」時、なぜそんなにモヤるのか、ひょっとしたら自分に問題があるのではないかと思考が迷子になった経験は誰しもあるだろう。そのモヤモヤの正体がわかると、自分の感覚に自信を持つことができる。その場で適切に言い返すことができれば、自信にもつながる。

著者自身も、若い時はナメられ、セクハラやパワハラの対象にされても「自分が悪いんだ」と思っていたという。「女は笑顔で愛想よく」と呪いをかけられ、わきまえた女として振る舞っていた。そうしているうちに感覚がマヒして、不眠や過食嘔吐などにも悩まされていた。フェミニズムとの出会いによって呪いの正体がわかり、「怒ってよかったんだ」ということに気づいた。

本書には、女性たちが元気にすこやかに暮らすために、世の中にはびこる呪いをぶちのめす「言葉の武器」がつまっている。

【必読ポイント!】 「モヤる言葉」と戦う

「女を使っている」という揶揄
salim hanzaz/gettyimages

会社でリーダーに抜擢された女性から、「『おじさん転がすの上手いよね』と男の同期に言われ、ショックで何も言い返せなかった」という報告があった。著者はそれに対して、「『私が男だったら言うか?』と胸ぐらをつかんでシュレッダーにかけたい案件」と怒る。

男性だったら「優秀だ」と普通に言われるのに、女性の場合は実力や努力が正当に評価されない。「どうせズルい手を使ったんだろ」と決めつけられる。これこそ「ヘルジャパンの男尊女卑仕草」だ。「今はもう女性差別なんてない」「気にしすぎでは」と本気で言う男性陣は、気にせずにいられることが特権だと気づくべきである。

このような揶揄をされた女性の中には、自分の態度に問題があるのかと悩む人もいるだろう。しかし言われた側ではなく発言する側に問題がある。迷った時は「それ私が男だったら言うか?」という視点で考えることを勧める。たとえば、若い男性の営業マンが体育会系であることを評価されて上司に気に入られても、「男を使った」「若い男は得だよな」などとは言われない。「女の実力を認めたくない」というミソジニー(女性嫌悪)を無自覚にまきちらす人々は、女性は言い返してこないと思って、ナメているのである。

普通に仕事をしているだけですけど?

「おじさん転がすの上手いよね」と言われた際に、笑顔で対応してはいけない。その代わり、ハシビロコウのような真顔で「え、どういう意味ですか?」と返してみる。立場的に強く出られない場合は、「そういうこと言う男性、多いですよね……」と苦虫を噛み潰したような顔をしてみよう。こういう反応をすることで、自分の発言のおかしさに相手も気がつくかもしれない。

このような発言をするのは男性に限らない。

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要約公開日 2023.08.04
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