ミレニアム・ファルコンを作った男

45歳サラリーマン、「スター・ウォーズ」への道
未読
ミレニアム・ファルコンを作った男
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45歳サラリーマン、「スター・ウォーズ」への道
未読
ミレニアム・ファルコンを作った男
出版社
出版日
2021年07月27日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

あなたは今自分がしている仕事に心から満足しているだろうか。昔からやりたくて仕方がなかった仕事に就けているだろうか。「心から満足している」「これこそやりたかった仕事」と答えられる人は決して多くないだろう。

かといって、今の仕事を辞め、キャリアを投げ出して新しい領域に挑戦するのは、並大抵の覚悟でできることではない。それで成果を出し、自分の夢を叶えるというのならなおさらだ。

しかし、それを実現してしまった人物がいる。この本の著者、成田昌隆――“Masa Narita” 氏だ。

サラリーマンだった著者が順風満帆のキャリアを捨て、夢だったCGモデラーを目指す決意をしたのが45歳。本書にはそんな著者が、ハリウッドで子供のころからの憧れだった『スター・ウォーズ』に関わり、宇宙船「ミレニアム・ファルコン」のモデリングを手掛けるまでの経緯が記されている。

しかし、それは魔法に彩られたシンデレラ・ストーリーではない。リスクを負い、地道にものを作り、冷静に現状を見極め、諦めず売り込みを続け、限界を超えていく、苦闘そのものだ。本書が教えてくれるのは、誰でもミレニアム・ファルコンに乗り込むことができる簡単な方法ではない。むしろ自分だけのミレニアム・ファルコンを求めて困難な道を進む心構えだ。その覚悟を持っていれば、本書はきっと前に進む勇気を与えてくれるだろう。

「やるか、やらないかだ。やってみる、などない」。そうルーク・スカイウォーカーに説いた、マスター・ヨーダのように(ルーク、ヨーダともスター・ウォーズに登場するキャラクター)。

ライター画像
池田明季哉

著者

成田昌隆(なりた まさたか)
ルーカスフィルム/ILM シニアCGモデラー。1963年生まれ、愛知県出身。名古屋大学工学部を卒業後、NECを経て日興證券へ転職。‘93年から米国赴任。会社勤めのかたわらCGの独学を始め、米VFX業界への転身を決意し退職。専門学校を経て2009年、46歳にしてハリウッドのVFX業界にプロデビュー。メソッドスタジオにて『タイタンの逆襲』のモデリングスーパーバイザー、デジタルドメインにて『アイアンマン3』のリードモデラーなどを経て現職。『スター・ウォーズ』エピソード7-9ではミレニアム・ファルコンやスター・デストロイヤーなどのCGモデリングを担当。

本書の要点

  • 要点
    1
    子供のころから映画やプラモデルが好きだった著者は、電機メーカーを経て証券会社に就職。シリコンバレーでの勤務を通じて、当時発展しつつあったCGに出会う。
  • 要点
    2
    CGを作って売り込むが、当時は成功しなかった。10年後、45歳のときにそれまでの仕事を辞め、退路を断って再チャレンジを決意。徐々に道が開け、ハリウッド屈指のVFX制作スタジオ、ILMに辿り着いた。
  • 要点
    3
    自分が何者かを探すうち、CGモデラーとして成功、憧れだったミレニアム・ファルコンを手掛けるに至った。誰もが自分自身の「ミレニアム・ファルコン」を見つけることが重要だ。

要約

45歳サラリーマン、CGモデラーを目指す

モデリングという仕事
carlotoffolo /gettyimages

あなたは「モデリング」という仕事を知っているだろうか。

知らないという人も、映画『スター・ウォーズ』の名前は聞いたことがあるだろう。『スター・ウォーズ』にはたくさんの宇宙船が登場する。

昔は精巧な模型を実際に作っていたが、現在は3DCGで描写される。デザイン画を元にして、この3DCGを制作するのがモデリングという仕事だ。3DCGはコンピュータ内で基本的にすべての作業が完結するため、すべての部品をひとつひとつ自分で作っていかなくてはならない。

こうして作られた「モデル」は、別のアーティストたちに送られ、色や質感、動きが付けられていく。そして最終的には、映画の中で自在に動き回る。映画に登場する宇宙船は、たくさんのアーティストの手を経ることで、リアルな「実物」に仕上がった、共同作業の賜物だ。

著者はこのモデリングを担当するアーティストである。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に登場する、主人公たちが乗り込む宇宙船「ミレニアム・ファルコン」や、巨大戦艦「スター・デストロイヤー」などを手掛けている。

モデラーと聞くと、映画やアートにずっと関わってきたと思われるかもしれない。しかし、CGモデラーになることを決意したのは、45歳のときだ。それまでは証券会社のサラリーマンだった。

さまざまな幸運と人の縁、そして映画への憧れが、筆者をモデラーへと導いていくことになる。

【必読ポイント!】 プラモデルからCGへ

CGとの出会いと挫折

著者は、子供の頃から映画とプラモデルを愛していた。宇宙に関わりたいとの思いから、大学を卒業後に人工衛星事業を手掛けていた電気メーカー、NECに就職する。

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要約公開日 2021.10.01
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