「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない

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「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない
出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2021年07月06日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「人に迷惑をかけるな」「早くしなさい」「みんなやってるよ」「やる気ないの?」……子どもの頃、誰もが大人から言われたことのある言葉ではないだろうか。本書ではこれらを「呪いの言葉」と呼んでいる。少々ラディカルな表現でドキっとさせられるが、確かに呪いの要素がないとは言い切れない。冒頭のような言葉をかけられたとき、無言の圧を感じ、動けなくなるような感覚を持った人も多いと思う。

呪いの言葉が怖いのは、無意識に使われているからだ。そして、そうした言葉によって、相手だけでなく自分も縛っていることに気づかない。

どんな親も我が子の幸せを願っている。しかし、「子どものため」の言葉が子どもを萎縮させ、幸せから遠ざけているとしたら悲しいことだ。毎日忙しく、先行きに不安を抱える中で子を育てるのは大変なことである。だが本書によると、意識を少しシフトさせ、かける言葉を変えていくことで「呪い」を「魔法」に変えることができるという。

本書の著者は、学年ビリの高校生「ビリギャル」を慶應義塾大学合格へと導いた坪田信貴氏である。長年教育に携わり、それぞれの個性を最大限に伸ばす「子別指導」を実践してきた経験より、子どもにかける言葉の重要性を説いている。

要約では、「呪いの言葉」と、それに代わる「魔法の言葉」をいくつか紹介していく。子どもも大人も自分らしくのびのびと生きるために、子育て中の方はもちろん、かつて子どもだったすべての方にお読みいただきたい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

坪田信貴(つぼた のぶたか)
坪田塾塾長。心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」。多くの生徒の偏差値を急激に上げてきた。一方で、起業家としての顔も持つ。また、人材育成、チームビルディングの能力が多くの企業から求められ、マネージャー研修、新人研修を行うほか、現在は吉本興業ホールディングスの社外取締役も務めるなど、活躍の場は枠にとらわれない。テレビ、ラジオ、講演会でも活躍中。著書に映画化もされて大ベストセラーとなった『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)のほか、『人間は9タイプ 仕事と対人関係がはかどる人間説明書』『バクノビ 子どもの底力を圧倒的に引き出す339の言葉』(いずれもKADOKAWA)、『どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法』(PHP研究所)、『才能の正体』(幻冬舎)、『吉本興業の約束』(大﨑洋氏と共著。文藝春秋)ほか多数あり。

本書の要点

  • 要点
    1
    子育てにおいて大切なのは、制限をかけることではなく、その子に合った可能性を見せることだ。
  • 要点
    2
    「人に迷惑をかけるな」という声かけは、「人に助けを求められない子」を育てることになりかねない。「困った人がいたら助けなさい」と教えることが、豊かな社会をつくることにつながる。
  • 要点
    3
    「早くしなさい!」と言っても、子どもは何をしてよいかも、早くすべき理由もわからない。子どもとともに一貫性のあるルールを作り、それを習慣にしていくことが望ましい。

要約

子どもに呪いをかける言葉

大人の反応や声かけで、子どもの自信と行動が変わる

子どもが算数のテストで低い点数をとったとする。それを見た親が「あなたは本当に算数が苦手だよね」と言ったら、子どもは「そうだ、自分は算数が苦手なんだ」と思い込み、それを証明するような思考や行動をとるようになっていく。一方で、正解できた部分に目を向けて「ここができるようになったね」と伝えれば、子どもは認めてもらえたと感じ、次はもっと頑張ろうと思うようになる。

このように、反応や声かけを変えれば、子どもの自信も次の行動も変わってくる。子どもの思考や行動は、大人の反応や声かけによって作られるのだ。

親の言葉が子どもの思考や認知を作る
yamasan/gettyimages

思考や認知は言葉によって作られる。つまり、親の言葉によって子どもの考え方や世界の見え方が変わるといえる。

『3000万語の格差』(ダナ・サスキンド、明石書店)は、幼児期における声かけの重要性を示す良書だ。この本によると、貧困層の子どもたちが3歳までに聞く言葉の数は、社会的に成功している層の子どもたちに比べて3000万語ほど少ないという。

著者のダナ・サスキンド氏は、耳の聞こえない子どもに人工内耳を移植する小児外科教授だ。彼女は、早い段階で耳が聞こえるようになれば、その子は言葉を理解して標準的な生活を送ることができると考えていた。だが生後7〜8か月に人工内耳を移植した2人の子どもを比較すると、それぞれの言語能力に著しい差が見られた。1人は小学3年生のときに標準的な読み書きができるようになったが、もう1人は幼稚園レベルにしかなれなかったのだ。後者は、家庭での声かけが圧倒的に少なかったことがわかっている。

また、社会的に成功している家庭では、豊かな語彙やポジティブな言葉が使われる傾向にあることも明らかになっている。親の使う言葉の数や種類によって、子どもの将来が左右されるのだ。

自己肯定感を下げる声かけから、可能性をひらく声かけに

社会が急速に変化する中、「子育てのやり方を変えないといけないのでは」と不安になっている人もいるようだ。しかし、社会がどう変わろうと、子育ての本質的な部分は何も変わらない。時代が激しく変化していくからこそ、本質に立ち返ることが重要である。

本書で伝えたいのは「『やめなさい』と制限をかけるのではなく、その子に合った可能性を見せること」だ。それなのに現代の日本は、「あれはダメ、これはダメ、もっと空気を読みなさい」と、その子の可能性をつぶしてしまう方向に向かっているように見える。

グローバル化とテクノロジーの進歩は、管理社会化を進めている側面がある。どんな情報も履歴に残り、趣味嗜好や行動がすぐにバレてしまうだけでなく、下手したら「晒される」。ますます「空気を読まなければならない感」が強まっているのである。

日本人はもともと、お互いの意図を察し合う「ハイコンテクスト文化」を持っている。しかしこれは世界のスタンダードではない。グローバルという観点でみると、価値観も体験も知識も違う人同士では、空気を読むことなどできるはずがないだろう。

日本は、以心伝心のカルチャーを持ちつつも、きちんと自己主張でき、自分で選択して行動できる文化へとバージョンアップすべきである。そのためには、子育てや教育の本質に立ち返り、子どもたちにかける言葉を変えることだ。子どもたちの自己肯定感を下げ、判断力を奪う声かけから、可能性をひらく声かけに変えていこう。

【必読ポイント!】自分から動けなくなる呪いをかける言葉

「人に迷惑をかけるな」
TARIK KIZILKAYA/gettyimages

ここからは、子どもにかけがちな「呪いの言葉」を例に出し、その言葉をどう変えていくべきかを考えていく。

まずやめたい声かけは「人に迷惑をかけるな」だ。多くの親が子どもに言っていることだろうが、誰にも迷惑をかけずに、誰の手も借りずに生きている人なんているのだろうか?

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要約公開日 2021.10.16
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