言葉は人間の心理に大きな影響を与える。特に強く影響されやすい人として、①コミュニケーションを苦手とする、②人間関係で緊張してしまう、③人とは違う点にこだわりをもつという3つのタイプが挙げられる。
“口ぐせリセット”は、これらのタイプの人間が迷い込むネガティブなスパイラルから抜け出す助けとなる。
言葉に影響されやすい人は、ポジティブなスパイラルに入る口ぐせの効果も絶大だろう。口ぐせをガラリと変えることによって、性格も人生も好転していく。
「私なんて……」、「私イケてないな……」、「サイアク!」と「あえて自分を卑下する」心理的理由の一つに、不快な思いの“予行演習”がある。
例えば身につけている物に自信がもてないときに、あらかじめ「イケてない」としておく。すると、他人からそれを指摘されても想定内としてストレスが軽くて済む。自己卑下の口ぐせにも相応の理由や効能はある。
しかし口ぐせを続けることによって暗示的に、「イケてない自分が本当の自分」になってしまう恐れもある。「イケてない」「サイアク!」な自分を避けるための口ぐせのはずが、使えば使うほど定着し、自分を貶めてしまう。
「普通は~」「基本は~」「世間では~」といった言い方が口ぐせになっている人も少なくないだろう。こうした言い方は、「自分は世間一般の人と同じ感覚で、“普通”なことを言っている(、だから正しい)」ということを主張している。
しかし、この“普通”とは、その人にとっての“普通”であって、社会共通の“普通”とは限らない。
人との会話でこれが口ぐせになっていると「自分の価値観を押し付けるウザい人」、「思い込みの激しい独りよがりの人」という印象を植え付けてしまう。
口ぐせは自分を守る“鎧”の役割を果たしている。その下に貧弱で弱い自分が隠れてもいる。
口ぐせで変わるのは、気持ちや評価、周囲との関係といったことばかりではない。身体の疲労度にも影響する。
ある女性は、朝起きたときに「寝ても疲れが取れていない」「ものすごく体がだるい」と言い、一日中その気分を引きずっていた。そして全てを「やっとこなしている」毎日だったという。
そこで、この「だるい」という口ぐせを「癒される」に変えた。不自然でも、寝起きに「癒される」と言うようにしたのである。
すると、「寝て起きたら、昨日の嫌なことを引きずっていない」と思えたという。朝一番で「癒される」と言うと、夜ぐっすり眠れた気分になったのである。
日中忙しく立ち働いていても、一息ついてソファーに座って「癒される」とつぶやいてみる。すると、再び全身の筋肉がほぐれ、ほんの30秒座っただけで体力が回復してくるのを感じたそうだ。
「人の悩みはすべて対人関係のせい」とする心理学もあるが、心地よい人間関係を維持するのは難しい。人間関係において避けたい口ぐせもあれば、反対に人間関係を好転させる口ぐせもある。
「なんで、あの人はあんな失礼なことを言うんだろう?」。カチンとくることを言われ、「なんであの人は?」という問いが、頭の中でぐるぐる回ってしまうことはないだろうか。そうすると相手の意図を邪推するようになり、最後にはその人を憎むようにさえなってしまう。
そんなときにすすめたい口ぐせは「もちろん~」だ。
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