AIが発達するとともに、「AIは信用できるのか」という議論も起こり始めた。かつては「人間への脅威」という漠然とした危機感にもとづいていたこの議論は、現在ではより具体的かつ建設的なものになっている。そのなかで重要な概念となっているのが、「責任あるAI(Responsible AI)」だ。
「責任あるAI」とは、顧客や社会に対して「公平性」や「透明性」を担保するための方法論だ。機械ではなく人間が意思の中心となる「人間中心」のデザインという考え方が根底にある。人間の意思決定には規範が必要とされる。「責任あるAI」の実現のために守るべき規範が、「AI倫理」と呼ばれるものだ。
日本の労働生産性が低いことはよく知られている。また、労働人口の減少も著しい。シニア人材の活用などの取り組みもされているが、国際競争力を考えると、付加価値の向上と労働時間削減の両方を目指し、労働生産性を上げるべきだ。
アクセンチュアの2016年の調査によると、2035年における各国推定GVA成長率(おおむねGDP成長率に相当する)において、日本は「AI活用が進まないと想定したベースラインのシナリオでは成長率が0.8パーセント程度」であるのに対して、「AIが最大限に活用されると想定する場合には2.7パーセント」の成長であると予測されている。AIの活用は日本企業にとって取り組むべき重要な課題なのだ。
特にAIが貢献できるのは、意思決定だ。企業活動ではM&Aや投資戦略などの大きな金額が動くものから、タスクの優先順位や採用基準などの現場レベルのものまで、さまざまな意思決定が行われている。意思決定の大半は人間が行っているが、人間には様々なバイアスがあり、偏った判断をしてしまいやすい。こうした人間の欠点を補うことができるのが、過去や現在のデータから意味のある知見を見出し、意思決定に利用する「データ駆動型の意思決定」だ。この先にあるのが、「AI支援による意思決定」である。これは、AIに過去のデータを学習させ、現在のデータを入力することで、現状把握と未来予想をさせて、それを参考に意思決定を行うというものである。
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