新型コロナウイルス感染症は、生活スタイルの変化を通じて、消費者の購買行動に変容をもたらした。まずは、日本を対象にした調査結果を見ていこう。
日本では消費者の家計状況が悪化しており、最も感染者が多かった時期においては、生活必需品以外の支出を控えるようになったことが分かっている。外出を控える傾向が強まったことで、オンラインと実店舗を組み合わせた購入プロセスの「デジタル・オムニ・チャネル」へのシフトが加速した。消費者は新しい商品や買い方を試しており、顧客ロイヤリティの在り方は大きく変容した。コロナ禍は新しい顧客を獲得するチャンスとなる一方、固定客を失うリスクもはらむ。
次に、いち早く以前の生活に近い形に戻った中国の変化から、日本が学ぶべきことを検討する。注目したい顕著な変化として、デジタル・オムニ・チャネルがさらに拡大したことが挙げられる。顧客ロイヤリティの変化は日本を上回っている。
変化した消費者の購買行動に適応し、成功した企業も存在する。そうした企業は、極めて短期間でオンラインチャネルを構築することで、巣ごもり需要をうまく取り込んでいる。
新型コロナの感染拡大に伴い、デジタルを活用したサービスが世界的に流行した。こうした新しい消費行動を牽引したのが、1996年から2012年生まれ、デジタルネイティブのZ世代である。
Z世代の特徴として「多面性」がある。バーチャルを含む複数のコミュニティに帰属し、複数のアイデンティティを使い分ける。個性を主張できる人気ブランドを好み、消費活動においてはサステナビリティ、倫理観を重視する。購入前に動画などを駆使して徹底的なリサーチをするが、所有することにはこだわらない。
一方、Z世代は「倫理観を重視しても、高価格を許容するわけではない」、「パーソナライゼーションを好むが、個人情報は出したくない」、「ネットで大量の情報を得ても、結局は家族や友人を一番信頼する」といった相反するような特性をもつ。Z世代の特徴をしっかりと理解したうえで、その両面を満足させる商品やサービスの提供が求められる。
新型コロナが最も大きな影響を与えた領域の1つが、移動の在り方だろう。旅行業界は、世界のGDPの10%を占める一大産業だが、2020年の国際移動は58~78%の大幅減となった。
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