マーケティング脳 VS マネジメント脳
マーケティング脳 VS マネジメント脳
なぜ現場と経営層では話がかみ合わないのか?
マーケティング脳 VS マネジメント脳
出版社
翔泳社
出版日
2009年07月16日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

あなたは右脳型だろうか、左脳型だろうか。そう問われると左脳型の方が偉いように感じられ、左脳型です、と答えてしまいがちだ。しかし、本書『マーケティング脳 VS マネジメント脳』では、右脳型のマーケティングの力が一貫して描かれており、右脳型でいいじゃないかと思わせてくれる。物事を「管理」するためには、左脳的な思考が必要になると言われるが、何かを売る、あるいは消費者にブランドを認識してもらうためには、どうも右脳的な思考がなくてはならないようだ。

これから車を買おうという状況を想定して、あなたは各メーカー(ブランド)に対してどういうイメージを持っているだろうか。メルセデスはステータス、ボルボは安全性、レクサスは贅沢、トヨタは信頼感、BMWは運転性能だということが、グローバルでの共通認識のようである。もちろん、日本でもそのような認識が広く浸透しているように思う。このように、実際の品質や性能の差はわからないが、ブランドのイメージは消費者に浸透しているという状態を作り出すことこそ、マーケティングを担う人の価値なのである。

悲しいかな、経営者の多くは左脳型で、右脳型のマーケティングの専門家の話が理解できないようである。そのため、どんなに優れたアイデアを提案しても、マーケティングへのリスペクトがない経営者の場合、採用されないことが往々にして起こるらしい。そのような鈍い経営者にならないためにも、そのような経営者を動かすためにも、本書のマーケティングとマネジメントの対比を用いて表現されるマーケティングの知見は極めて価値が高く、是非ご一読いただきたい良書である。

ライター画像
大賀康史

著者

アル・ライズ & ローラ・ライズ
アルとローラは親娘。共同経営しているコンサルティング会社 Ries&Riesはフォーチュン500社に名を連ねる有力企業(IBM、メルク、AT&T、ゼロックスなど)を顧客に抱える。共著に『マーケティング22の法則』『インターネット・ブランディング11の法則』(ともに東急エージェンシー)、『ブランドは広告でつくれない』(翔泳社)がある。アルはジャック・トラウトとともに「ポジショニング」という術語とそのコンセプトを発表したことでも、マーケティング、ブランディング、プロダクト・マネジメント戦略の第一人者と名高い。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

本書の要点

  • 要点
    1
    もしあなたが大会社のCEOなら、おそらく左脳型だろう。一方で、マーケティングの人間であれば、きっと右脳型だ。根拠となる材料が乏しくとも、勘や直感で判断を行う。
  • 要点
    2
    メルセデス・ベンツの強みは、実際の性能にあるのではなく、高いステータスというイメージを与える「ブランド」にある。近年フルラインナップ化が図られているが、本来の強みを再認識するべきだろう。
  • 要点
    3
    有名なビジネススクールの名前を聞くと、人々は「マーケティング」「金融」などのように、そのビジネススクールが強い領域をイメージする。そのように一言で表現できる状態が、ブランドの到達点だ。

要約

はじめに

maxsattana/iStock/Thinkstock
右脳と左脳

人間の脳は左右に分かれ、それぞれ情報の処理の仕方が異なる。左脳は言語で考え、直列的で直線的な考えをする。右脳は視覚的なイメージで、並列的に情報を処理する。脳にも右利きと左利きがあると言われている。

もしあなたが大会社のCEOなら、おそらく左利きだろう。事実や市場データなどの数字による裏付けを重視する。一方で、マーケティングの人間であれば、きっと右利きだ。根拠となる材料が乏しくとも、勘や直感で判断を行う。

左脳タイプは確信が強く、右脳タイプはそれほど強い確信を持てない。世界は途方もなく広大で、複雑かつ矛盾に満ち、人間には完璧に理解できないという考え方をする。両方の脳を同じように使えれば良いのだが、研究によるとそうはできないらしい。

起業家と経営者は脳のタイプでも分かれているようだ。起業家は例外なく右脳タイプ。大胆な将来像を描き、実現に向け全力を尽くそうとし、しばしば苦しい状況に置かれる。また、起業家は長期的な経営者としては優秀ではないケースが多い。軌道に乗った会社を運営するためには、左脳タイプが必要になってくるのだ。ただ例外は存在するものであり、市場調査に頼らず、視覚的な発想をするスティーブ・ジョブズは右脳タイプのCEOだと言えるだろう。

ビロードの厚い幕

hjalmeida/iStock/Thinkstock
両者を隔てる溝

マーケティングとマネジメントの間には、ビロードの幕が下ろされており、両者を隔てている。『フォーチュン』誌が、創刊75周年を記念し、「ビジネスのすべてがわかる75冊」を選んだ際、何とマーケティングの本は1冊も入っていなかったのはその典型だ。

多くの左脳型CEOは、マーケティングについて誤解をしており、その認識は間違いだらけである。マーケティングは、常識的なものでもなければ、簡単に学べるものでもない。多くの会社の苦境の原因は、CEOにマーケティングの理解が不足しているからである。

2006年、クライスラーは売上が7パーセント減少し、15億ドルの損失に見舞われた。結果として、2007年にダイムラーがクライスラーをサーベラス・キャピタル・マネジメントに売却する。次にサーベラスは、ホームデポのCEOを務めていたロバート・ナルデリを雇った。ナルデリが得意とするのは「コスト削減と製造」だった。ナルデリは1万3000人の解雇を計画するクライスラーの経営陣に対し、「スピードを速められるかどうか、効率を改善できるかどうか。そこに成否がかかっています」と言った。

しかしマーケティングの視点からは、スピードや効率に問題はないし、ましては価格にも問題はない。問題はクライスラーの車を買う理由がひとつもあげられないことにあるのだ。

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要約公開日 2014.09.26
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