著者が開催するビジネスパーソン向けのセミナーの受講者が、「うちの会社は、その他大勢のフォロワー企業ですね」と自嘲気味に言うことがある。業界トップ企業の「リーダー」、業界二番手の「チャレンジャー」、他社と棲み分ける「ニッチャー」、その他の企業群である「フォロワー」の4分類における、「フォロワー」を指しているのだ。
「フォロワーのままではダメだ!」というのは教科書的には正しいのかもしれないが、実際問題として圧倒的大多数の企業はフォロワーなのである。そこでフォロワーに適した戦略を思案していこうという試みが本書ではなされている。
業界大手に追随するフォロワーに対しては、「選択と集中」を進めよという議論になりがちである。しかし、本当にフォロワーは選択と集中をするべきなのだろうか。特に中小企業の場合、集中した事業がコケてしまったら、企業の存亡に関わることになり得る。選択と集中は、そのような振幅の大きいハイリスクハイリターンの戦略だということを肝に銘じておくべきなのだ。
そこで「選択と集中」のリスクをコントロールする、「リスクヘッジ競争戦略」を考えるべきであり、これが安定成長に向けて不可欠な打ち手となるのだ。
読者の方は合羽橋の道具街について、聞いたことがある方が多いのではないだろうか。東京都台東区西浅草・松が谷エリアの食品関連器具の商店街のことである。特にこれから飲食店を始める人が、足を向ける場所と言われており、外国人観光客の観光スポットにもなっている。
しかしなぜライバル同士が軒を連ねるのだろうか。競合多数の中に身を置くことになるのだが、それよりも集客の効果を求めているのだ。一軒ずつの知名度はなくとも、「合羽橋道具街」という名前は知られており、顧客が街として提供する品揃えに惹かれてくるのである。これは共同販促の一種であると言えるだろう。
多品種多頻度配送が進むなかで、物流コスト削減のため多数の同業者が物流を共同化するという取り組みがある。これは共同物流と呼ばれるもので、商品アイテムや配送ルートが類似している場合にメリットが大きくなるものだ。
営業上競合して直接組むことが難しい場合は、3PL事業者(サードパーティロジスティクス:荷主企業から物流業務を受託するアウトソーシング業者)に依頼して、3PL事業者主導で共同化を実現する方法もある。
次に共同仕入という戦略を紹介する。特に食品スーパー業界における動きが有名であり、その代表的な組織はCGCジャパンだ。1973年のオイルショックを契機に大手量販店への対抗から中堅スーパーが連携してできた組織である。2014年5月1日現在で、加盟企業数226社、総店舗数3873店、売り上げ規模は4兆2383億円にも及ぶ。
ここまで大がかりなチェーンにもなると、共同仕入だけでなく共同物流・PB(プライベートブランド)開発でも連携して、規模の経済を働かせている。
業界内でリーダー企業と直接対峙することは、リソースの違いから困難を伴うものとなる。そこで競争を回避する一番の方法は、リーダー企業と組むことである。その具体的な方法として、①商品ラインの棲み分け、②営業エリアの棲み分け、③OEM供給が存在する。
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