「フォロワー」のための競争戦略

リーダーやニッチャーでなくても勝ち残る
未読
「フォロワー」のための競争戦略
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リーダーやニッチャーでなくても勝ち残る
未読
「フォロワー」のための競争戦略
出版社
日本実業出版社
出版日
2014年06月26日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

フォロワーと聞いた際、多くの方は負け犬で八方塞がりの企業だと感じないだろうか。しかし考えてみてほしい。ある業界において教科書の題材になるようなトップ企業は1社、チャレンジャーも1社、残りはニッチャーかフォロワーに識別されるのだ。つまり、企業の大多数はフォロワーに属しており、様々な制約を抱え、教科書通りの美しい戦略論をかざされても、しっくりこない企業たちなのである。

それではフォロワーはどのように戦っていけば良いのだろうか。その問いに12の戦略を用いて答えようというのが、本書の試みである。一つ一つは経営学を学んでいれば聞いたことが多い理論であろうが、それをフォロワーの観点からまとめ上げていることに本書の価値がある。特に地方地盤の小売業や外食業などでは、人口動態と嗜好の変化の影響が大きく、衰退市場の中での戦いを強いられていることが多い。そのような企業群に対して、わかりやすい事例と解説を加え、取るべき道の指針を示している点で、本書は大いに参考になろう。

経営学においてはMBA的な教育が支配的であり、そこではグローバル市場における成功例が取り上げられることが多く、華やかな事例を学ぶ。しかし多くの企業が置かれている状況では、特に内部のケイパビリティの不足から理想論だけでは効果が上がらないどころか、致命的な判断ミスを犯すことにも繋がりかねない。本書はそのような各産業で裾野を支える企業に関わる、あらゆるビジネスパーソンが意識をしておかなければいけないことが溢れており、是非一読を薦めたい。

ライター画像
大賀康史

著者

手塚 貞治(てづか さだはる)
(株)日本総合研究所 総合研究部門 部長/主席研究員。東京大学文学部社会学化卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)、中小企業診断士。NTTを経て日本総合研究所に入社。経営戦略策定、事業計画策定、IPO支援、IR支援、社員検討会プログラム支援などのコンサルティング業務に従事。
著書は『マネジメントの基本』『経営戦略パーフェクトセオリー』『戦略フレームワークの思考法』(ともに日本実業出版社)、『ジュニアボード・マネジメント』『必ず結果を出す!フレームワーク仕事術』(ともにPHP研究所)、『経営戦略の基本がイチから身につく本』『株式公開を目指す企業のためのビジネスプラン策定マニュアル』(ともにすばる舎)、『「株式上場」を考えた時に読む本』(すばる舎リンケージ)ほか。

本書の要点

  • 要点
    1
    選択と集中は、ハイリスクハイリターンの戦略になるため、そのリスクをコントロールする、「リスクヘッジ競争戦略」を考えるべきである。
  • 要点
    2
    競争回避の手段として、商業集積にあえて身を置く共同販促、共同物流や共同仕入、リーダーとの提携など様々存在しており、現在圧倒的No.1の実力がなくとも生き延びることが可能である。
  • 要点
    3
    フォロワーは、むしろ多くの人員や設備を抱えていないことから「持たざる強み」を発揮しやすい環境にあり、コストを抑えながら顧客満足を実現する真のローコスト経営を志向することが有効だ。

要約

「フォロワー」にとっての「選択と集中」の是非

Sherman2013/iStock/Thinkstock
フォロワーが取るべき戦略とは

著者が開催するビジネスパーソン向けのセミナーの受講者が、「うちの会社は、その他大勢のフォロワー企業ですね」と自嘲気味に言うことがある。業界トップ企業の「リーダー」、業界二番手の「チャレンジャー」、他社と棲み分ける「ニッチャー」、その他の企業群である「フォロワー」の4分類における、「フォロワー」を指しているのだ。

「フォロワーのままではダメだ!」というのは教科書的には正しいのかもしれないが、実際問題として圧倒的大多数の企業はフォロワーなのである。そこでフォロワーに適した戦略を思案していこうという試みが本書ではなされている。

業界大手に追随するフォロワーに対しては、「選択と集中」を進めよという議論になりがちである。しかし、本当にフォロワーは選択と集中をするべきなのだろうか。特に中小企業の場合、集中した事業がコケてしまったら、企業の存亡に関わることになり得る。選択と集中は、そのような振幅の大きいハイリスクハイリターンの戦略だということを肝に銘じておくべきなのだ。

そこで「選択と集中」のリスクをコントロールする、「リスクヘッジ競争戦略」を考えるべきであり、これが安定成長に向けて不可欠な打ち手となるのだ。

競争回避戦略

ライバル同士で集まる「合羽橋商店街」

読者の方は合羽橋の道具街について、聞いたことがある方が多いのではないだろうか。東京都台東区西浅草・松が谷エリアの食品関連器具の商店街のことである。特にこれから飲食店を始める人が、足を向ける場所と言われており、外国人観光客の観光スポットにもなっている。

しかしなぜライバル同士が軒を連ねるのだろうか。競合多数の中に身を置くことになるのだが、それよりも集客の効果を求めているのだ。一軒ずつの知名度はなくとも、「合羽橋道具街」という名前は知られており、顧客が街として提供する品揃えに惹かれてくるのである。これは共同販促の一種であると言えるだろう。

共同物流と共同仕入
Purestock/Thinkstock

多品種多頻度配送が進むなかで、物流コスト削減のため多数の同業者が物流を共同化するという取り組みがある。これは共同物流と呼ばれるもので、商品アイテムや配送ルートが類似している場合にメリットが大きくなるものだ。

営業上競合して直接組むことが難しい場合は、3PL事業者(サードパーティロジスティクス:荷主企業から物流業務を受託するアウトソーシング業者)に依頼して、3PL事業者主導で共同化を実現する方法もある。

次に共同仕入という戦略を紹介する。特に食品スーパー業界における動きが有名であり、その代表的な組織はCGCジャパンだ。1973年のオイルショックを契機に大手量販店への対抗から中堅スーパーが連携してできた組織である。2014年5月1日現在で、加盟企業数226社、総店舗数3873店、売り上げ規模は4兆2383億円にも及ぶ。

ここまで大がかりなチェーンにもなると、共同仕入だけでなく共同物流・PB(プライベートブランド)開発でも連携して、規模の経済を働かせている。

提携棲み分け戦略 ~リーダーと提携して競争を回避する~

業界内でリーダー企業と直接対峙することは、リソースの違いから困難を伴うものとなる。そこで競争を回避する一番の方法は、リーダー企業と組むことである。その具体的な方法として、①商品ラインの棲み分け、②営業エリアの棲み分け、③OEM供給が存在する。

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要約公開日 2014.07.18
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