日本人は歴史的に、稲作をすることで生計を立ててきた。「種もみ」をまいて苗を育て、その苗を田に植えて、稲を実らせる。翌年は、より多くの種もみを確保して、次の季節はもっとたくさんの稲を育てる。毎年、種もみを増やしていき、自分の食べる分以上に収穫できるようになったとき、お金という儲けに換えることができる。これが、「富」を築く活動における根本原理である。
富とは、お金のことではない。富とは、人びとの生活を豊かにする資源や物資のことである。稲作の例で説明すると、収穫されたお米、栄養を含んだ水資源、稲を実らせる田んぼ、用水路などの灌漑施設などが富だといえる。さらに、収穫したお米を運搬するトラックや鉄道、それぞれの場所で働く人や農具、稲作のための決まりごとや仕組みなどのシステムもすべて富にあたる。お金は、富を評価する物差しなのだ。
経済やビジネスの世界では、こうした富が「インフラ」と呼ばれる。国家経済におけるインフラの代表的なものは、水道や電気、ガスなどのライフラインである。国のインフラを分厚くすることが、国を富ませることにつながる。
たとえば戦前の日本は、統治下にあった台湾のインフラ開発と整備に、熱心に取り組んでいた。このことによって台湾は工業化し、住民の生活水準は向上した。戦後、日本の統治を離れた台湾は、日本が作ったインフラを大きな支えとして、工業国として目覚ましい発展を遂げたのである。
国にインフラという富が増えれば、そこの経済を流れるお金の量は増える。ということで、個人がお金を儲けるためにはインフラ作りに従事することが必要だ。
現代の日本における新しいインフラといえば、スマートフォンやインターネット上の総合ショッピングサイト、自然エネルギーによる発電システムなどである。
新しく生まれるインフラから、将来社会の富となりそうな種もみ(=次の時代のニーズを捉えたビジネスチャンス)を見つけよう。それを大切に育てることで、自分自身も経験とスキルを増やせて、社会にとって最も大切な「富」の一部である「人財」になることができる。
日本の一人ひとりの豊かさを見る指標である「1人あたりGDP」は、2012年のIМFデータで12位。
しかし、日本より上位にいる国は、第10位のアメリカを除き、日本の数十分の一から数百分の一程度の人口しかない小国である。日本には、1億2700万人もの巨大市場が存在していることを忘れてはいけない。さらに米国ほど貧富の差が激しくなく、分厚い中流層が社会の中心を占めている。つまり日本人は、世界で最も富める国民と言えるのだ。
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