振り切る勇気

メガネを変えるJINSの挑戦
未読
振り切る勇気
振り切る勇気
メガネを変えるJINSの挑戦
著者
未読
振り切る勇気
著者
出版社
日経BP
出版日
2014年05月26日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

衰退の一途をたどってきたメガネ業界において、JINSは異色な存在だ。それまで値段が高くて当たり前だったメガネ業界に激震が走った、圧倒的に安くておしゃれなメガネ。そして、視力矯正だけがメガネをかける目的だと思われていたという「常識」を覆した、パソコンのブルーライトをカットする機能的なメガネ。こうしたセンセーショナルな商品を提供するJINSの広告を、一度はみなさんも見かけたことがあるのではなかろうか。

本書はメガネ業界でイノベーションを起こし続けるJINSの社長、田中仁氏の半生と、JINSの歩みを記した一冊だ。視力が良かった田中氏はメガネという商材に出会う前まで、実はメガネをかけたことがなかったらしい。メガネ業界の常識も知らないまま、常に体当たりでチャレンジを続けてきた。人と違うことをしているせいで、何度も逆境や失敗の憂き目にあってきた。本書はその失敗の系譜でもある。

また、ここぞという勝負どころでは、周りをぎょっとさせるほど大胆なフルスイングで臨んできた。それまで年間1億円だった広告宣伝費をひと月で一気に5億円も使ったり、月3000本売れるフレームなどなかったときに、新作フレームを7万本も発注したり。田中氏の思いきりのよさと、勝負の流れを読み解く力は読んでいて実に痛快である。

本書は、JINSのイノベーションに挑み続ける姿勢と、力いっぱい振り切るチャレンジ精神を教えてくれる。田中氏が25年前に起業してから、事業を軌道に乗せ、世界進出に注力している現在までの道程は、多くの方に勇気を与えてくれるに違いない。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

田中仁(たなか・ひとし)
株式会社ジェイアイエヌ代表取締役社長。1963年、群馬県生まれ。1988年ジェイアイエヌを設立、代表取締役社長に就任。2001年アイウエア事業「JINS」(ジンズ)を開始し、2006年大証ヘラクレス(現JASDAQ)に上場。2011年『Ernst&Young ワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2011』モナコ世界大会に日本代表として出場。2013年東京証券取引所第一部に上場した。

本書の要点

  • 要点
    1
    思いついたアイデアが常識を外れていて、9割の人が反対していたとしても、そこに金の鉱脈がある可能性がある。
  • 要点
    2
    経営者は積極的な気持ちで攻め続けないといけない。そうでなければ、会社の成長がないどころか、安定すらない。
  • 要点
    3
    本気でチャレンジして失敗した経験は、フルスイングしてよいかどうかの直感を磨いてくれる。ここが勝機と見極めたら、勇気を出して振り切ることこそが大きな成功につながる。

要約

メガネとの出合い

お客様がいないのにもうかっているメガネ店

地元の信用金庫を退職した後、雑貨の企画製作を行う「ジェイアイエヌ」を起業した田中仁氏は中国製のバッグで利益をあげ、次なるヒット商品を模索していた。

そこに衝撃的な出合いが訪れる。たまたま旅行で訪れた韓国で、メガネが1本3000円、しかも注文してから15分で手に入れられるという看板を見つけたのだ。当時の日本で買えるメガネの相場は3万円ほど。メガネを選んでから受け渡しまでは何日もかかっていた。

この価格差がどこから来るのか気になった田中氏は、メガネ業界について調べてみた。すると、メガネ店の店舗には客がほとんどいないにもかかわらず、日本のメガネ業界はちゃんともうかっている。日本では、メガネをつくる人と買う人の間に、フレームやレンズのメーカー、取次業者、販売店などたくさんの人が関わるため、多額の中間マージンやブランド料金が発生していたのだ。価格は跳ね上がるが、十分に利益を見込んで設定された価格であるため、売れるメガネの本数が少なくても十分利益が出せるのである。

田中氏はここでひらめいた。製造小売業として製品の企画開発、製造、販売までを一手に引き受けられれば、メガネの価格を大幅に下げられるのではないか。そうすれば大ヒットとなったユニクロの低価格フリースと同じように、低価格のメガネは業界を変える存在になれるかもしれない。

仕入れ先を見つける
BartekSzewczyk/iStock/Thinkstock

1本のメガネの値段を5000円まで下げられるのではないかと見込んだ田中氏は、格安でレンズやフレームを卸してもらえないかとメーカーへの交渉を始めた。しかし国内メーカーではとりあってもらえない。そこで、商売のヒントを得た韓国の現地メーカーをまわることにした。

流通ルートもコネもなかったが、知り合いに通訳を頼み、一軒一軒メーカーをあたって、ようやくフレームとレンズを安く卸してもらえる会社が見つかった。

製造のめどがつき、田中氏はまず福岡に店舗をつくることにした。地方の大都市で成功すれば、ほかの地方都市でも成功できると踏んだからだ。最初から全国展開を念頭に置いていたのは、このときすでに商売がうまくいきそうな「におい」をかぎとっていたからであった。

9割の人が反対するところに、金の鉱脈がある
SoumenNath/iStock/Thinkstock

2001年4月、屋号を「JIN’S」(以降JINS)に決め、ジェイアイエヌ初のメガネ店がオープン。価格はメガネ一式5000円と8000円のツープライス制を設定した。

今から見れば荒削りな店舗や製品だったが、クチコミやニュースが評判を呼び、1日に100本以上のメガネが飛ぶように売れた。お客さまが集まりすぎて、スタッフが泣きついてくるほどだったという。

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要約公開日 2014.07.29
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