マーケティングの概念の誕生は、今から100年以上前にさかのぼる。交通と通信が発達した19世紀末の米国において、大量生産された製品を売る為に、販売網の拡大や整備、といった「マーケティング」が生まれた。20世紀に入るとマーケティングは研究対象となり、論文や大学の講座という形で登場し、様々なマーケティングの基本概念が次々と出現するようになる。例を挙げれば次のようなものだ。
製品・技術にはその寿命(ライフサイクル)として、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つの段階があるとする「製品ライフサイクル」。
参入しようとする市場がどのような競争環境にあり、どの企業がどれだけの力を持っているかを判断する材料となる「マーケットシェア(市場占有率)」及び「7つの市場シェア目標値」。
市場を細分化(セグメンテーション)し、市場を特定(ターゲティング)して、特定した市場に対して競争優位性を確立(ポジショニング)するという一連の流れを指す「STP」。
製品づくりから価格の設定、販売方法、販売促進策、とった多様な要素を組み合わせ、相乗効果をあげる「マーケティング・ミックス」。
「マーケティング・ミックス」を考える際のフレームワークとなる「製品(Product)」「流通(Place)」「プロモーション(Promotion)」「価格(Price)」というマーケティングにおける4つの分類である「4P」。
このように、マーケティングはビジネスの現場で生まれ、次第に多様な概念や理論を包含するようになっていった。
マーケティングは当初、企業がモノを売る為の「利益追求型概念」から始まった。しかし、次第に強引な販促手法や環境破壊などの問題が発生し、企業側の論理だけで製品を売ることには限界があることに気づく人が増え、1971年には社会との関わりを重視する「ソーシャル・マーケティング」の考え方が示された。それまでのモノを売るためのマーケティングから転換し、顧客視点や社会性・公共性までを視野に入れたマーケティングのことを「マーケティング2・0」と称する。
こうしてマーケティングの適用範囲はどんどん広がっていく。「グローバル・マーケティング」とは、技術の進化と市場のグローバル化が加速するなかで、人々の多様な嗜好が収束し、規模の経済によってコストや価格の低減につながる市場が生まれる、という考え方のことだ。また、それまで消費財と耐久消費財の市場を中心に進化してきたマーケティングの概念は、生産財市場においても活用されるようになった。
他にも、地球上に40~50億人いるという貧困層を顧客として捉える「BOP(Bottom of the Pyramid)マーケティング」や、社会貢献性のある目的に関連付けたプロモーション(購入者がある企業の商品を購入すると、その企業が慈善団体などに寄付するなど)である「コーズ・リレーテッド・マーケティング」など、マーケティングの概念は時代に合わせて変化している。
先進国では、大部分の市場が成熟し、製品のライフサイクルが衰退期にさしかかっている。市場活性化が必要な市場と製品・サービスを抱えている場合、企業はどのような取り組み(イノベーション)が必要であろうか。
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