日本企業が中国に進出したものの苦戦を強いられる理由は、自分たちの組織の内部にあることが多い。しかし、そうした企業は日本本社向けには、尖閣諸島問題や反日デモ、少数民族の暴動の頻発化や環境汚染のような、中国という国のリスクを理由として報告しがちである。そのため、中国ビジネス慎重論がささやかれるようにまでなってきたが、そのあいだに、中国市場では欧米をはじめ韓国や台湾の企業がプレゼンスを増している。今一度中国市場の魅力を認識し、内販拡大に活かすべきだ。
今まで、中国は製造業における「世界の工場」という役割を担ってきたが、人件費の上昇などにより、今までのような生産コストの安さは期待できなくなっている。一方、消費市場としての中国市場は成長を続けており、その規模は、アメリカに次ぐ巨大さである。たとえば、中国展開が成功しているといわれているユニクロは、日本の3割増しくらいの値付けで、高品質アパレルブランドという地位を確立している。今後は、中国で「安く作る」のではなく、「高く売る」というふうに、ビジネスモデルを再定義すべきであろう。
中国市場のもう一つの性質として、首都圏だけでなく、地方都市も順調に成長しているということがいえる。多くのアジア諸国については一国を一つの商圏と考えられるが、中国は巨大な商圏が一国内に複数存在しているのだ。
よく使われる用語、「チャイナ・プラス・ワン」の正しい解釈は、中国を生産拠点とみなしたときに、一極集中を避けて東南アジア諸国などのもう一つの生産拠点を準備することである。そうして、中国の人件費上昇の影響やリスクを分散させる意味がある。
しかし、いつのまにか「チャイナ・プラス・ワン」は、中国進出企業のあいだで、販売活動にも使われるようになった。中国市場だけでなく別の東南アジア諸国を同時または先に攻略しようという意味合いで、だ。しかし、著者に言わせれば、こちらは間違った言葉の使い方であり、間違った方法である。
巨大市場を複数抱える中国市場は他に代替できるようなものではなく、アジア戦略を考えるときに真っ先に取り組むべき市場だという。
中国で事業を展開するのに適したタイミングは、事業のライフサイクルを見極めて判断せねばならない。ライフサイクルは都市によっても変わってくるが、成長期に参入することが望ましい。また、コストの高い上海に無理に進出するより、二~三級都市に進出することに勝機があるのではないかと著者は語る。
より深い市場理解のためには、調査が必要だ。自社が販売すべきお客様は誰か、そのお客様のニーズはなにか、どの販売ルートが一番売上をあげられるか、などの情報を得るために、まずは仮説をつくるべきだ。そうすることで、現地の調査会社に頼んだ場合にも、網羅的なアウトプットを避けることができる。
仮説検証ができて市場がわかれば、戦略はおのずと見えてくる。戦略策定にあたっては、「絶対にやらないこと」を決めることがとくに大切だ。
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