中国市場で日本の商品を「高く売る」ためのマーケティング戦略

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中国市場で日本の商品を「高く売る」ためのマーケティング戦略
出版社
総合法令出版

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出版日
2015年03月07日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

隣国に広がる巨大な市場に、たくさんの日本企業が内販拡大をねらって参入してきた。しかし、著者が船井総研上海を立ち上げてから3年が経つというが、そうした日本企業の70%は苦戦を強いられているという。

中国が製造業の「世界の工場」だった時代は終わった。人件費の上昇などにより、中国で「安く作る」ことはもうできない。代わりに今、中国にあるのは巨大な消費市場だ。これからはその市場で「高く売る」ことへビジネスモデルを切り替えていかなければならない。本書では、そうするためにどうマーケティング戦略を組み立てていくかを、わかりやすく解説する。とくに注目すべきは、自分たちで直接売る/代理店などを介する場合と、店舗を構えて販売する/ネットなどの無店舗チャネルで販売する場合の組み合わせにより、4パターンに分けられたマーケティングの具体的な戦略だ。最新のローカルな情報に明るい著者が、中国の商習慣や、消費者の感覚などをふまえて提案する方策は、説得力に満ちている。

日本企業が陥りがちな失敗についても、なぜそれが失敗となってしまうのかを現地の感覚から説明しているため非常にわかりやすい。

中国へ赴任予定の方、また、新しい市場として中国を検討している企業の方は、ぜひとも本書に目を通しておくべきだと思われる。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

中野好純(なかの よしずみ)
株式会社船井総合研究所、上席コンサルタント。
船井(上海)商務信息諮詢有限公司、総経理。
1970年生まれ。1993年、P&Gに入社し、新製品の市場導入プロジェクトのプロジェクトリーダーなどを経験。1998年船井総合研究所に入社、多くの海外関連コンサルティング案件を統括。主にクライアント企業のグローバル化、海外戦略立案の支援に従事し、特にマーケティング・販促・販路開拓を得意とする。2012年、船井総合研究所の海外拠点である船井(上海)商務信息諮詢有限公司を立ち上げ、総経理に就任。主に中国(都市部)の消費財・サービス関連の販路開拓、マーケティングを行う。

本書の要点

  • 要点
    1
    地方都市も成熟しつつある中国は、国内にいくつもの巨大な商圏を擁している。アジア戦略を考えるときに真っ先に攻略すべき国である。
  • 要点
    2
    市場調査の前に、何を誰に売るのかということで、ある程度販売チャネルの仮説をつくることが大切である。自分たちにとって不透明な市場を仮説検証するかたちで調査することで、精度の高い結果が得られる。
  • 要点
    3
    販売対象とチャネルごとに分けた4つのパターンから戦略を考えることで、最適解にたどりつける。
  • 要点
    4
    中国ビジネスに適応できていない日本企業には、日本のやり方にこだわる、日本人だけで大事なことを決める、日本語しか使わないなどの「日本病」が見られる。

要約

なぜ今中国なのか

中国市場の魅力
selensergen/iStock/Thinkstock

日本企業が中国に進出したものの苦戦を強いられる理由は、自分たちの組織の内部にあることが多い。しかし、そうした企業は日本本社向けには、尖閣諸島問題や反日デモ、少数民族の暴動の頻発化や環境汚染のような、中国という国のリスクを理由として報告しがちである。そのため、中国ビジネス慎重論がささやかれるようにまでなってきたが、そのあいだに、中国市場では欧米をはじめ韓国や台湾の企業がプレゼンスを増している。今一度中国市場の魅力を認識し、内販拡大に活かすべきだ。

今まで、中国は製造業における「世界の工場」という役割を担ってきたが、人件費の上昇などにより、今までのような生産コストの安さは期待できなくなっている。一方、消費市場としての中国市場は成長を続けており、その規模は、アメリカに次ぐ巨大さである。たとえば、中国展開が成功しているといわれているユニクロは、日本の3割増しくらいの値付けで、高品質アパレルブランドという地位を確立している。今後は、中国で「安く作る」のではなく、「高く売る」というふうに、ビジネスモデルを再定義すべきであろう。

中国市場のもう一つの性質として、首都圏だけでなく、地方都市も順調に成長しているということがいえる。多くのアジア諸国については一国を一つの商圏と考えられるが、中国は巨大な商圏が一国内に複数存在しているのだ。

アジア戦略と「チャイナ・プラス・ワン」の誤解

よく使われる用語、「チャイナ・プラス・ワン」の正しい解釈は、中国を生産拠点とみなしたときに、一極集中を避けて東南アジア諸国などのもう一つの生産拠点を準備することである。そうして、中国の人件費上昇の影響やリスクを分散させる意味がある。

しかし、いつのまにか「チャイナ・プラス・ワン」は、中国進出企業のあいだで、販売活動にも使われるようになった。中国市場だけでなく別の東南アジア諸国を同時または先に攻略しようという意味合いで、だ。しかし、著者に言わせれば、こちらは間違った言葉の使い方であり、間違った方法である。

巨大市場を複数抱える中国市場は他に代替できるようなものではなく、アジア戦略を考えるときに真っ先に取り組むべき市場だという。

中国市場を「見える化」する

市場調査の前に仮説をつくる
peshkov/iStock/Thinkstock

中国で事業を展開するのに適したタイミングは、事業のライフサイクルを見極めて判断せねばならない。ライフサイクルは都市によっても変わってくるが、成長期に参入することが望ましい。また、コストの高い上海に無理に進出するより、二~三級都市に進出することに勝機があるのではないかと著者は語る。

より深い市場理解のためには、調査が必要だ。自社が販売すべきお客様は誰か、そのお客様のニーズはなにか、どの販売ルートが一番売上をあげられるか、などの情報を得るために、まずは仮説をつくるべきだ。そうすることで、現地の調査会社に頼んだ場合にも、網羅的なアウトプットを避けることができる。

仮説検証ができて市場がわかれば、戦略はおのずと見えてくる。戦略策定にあたっては、「絶対にやらないこと」を決めることがとくに大切だ。

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要約公開日 2015.04.17
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