消費者にとって、新しいビジネスやサービスは歓迎すべきものだ。一方で、既存事業を抱える企業には、新たな競争相手の出現という脅威になるものである。相手との距離感がわかっている業界内での戦いではなく、異業種からも競争を仕掛けられることは近年の大きなリスクとなってきている。
このように競争の土俵・相手・ルールが変わるようなプレーヤーを本書では「ゲーム・チェンジャー」と呼んでいる。ゲーム・チェンジャーにはどのようなタイプが存在するだろうか。製品・サービスと、儲けの仕組みのそれぞれが既存のプレーヤーと異なるかどうかによって、4つの類型に分類される。
・秩序破壊型
既存の製品やサービスでありながら、新しい儲けの仕組みで提供する、既存事業者にとって最も手強いプレーヤー。
・市場創造型
新しい製品やサービスを提供し、儲けの仕組みは変わらない、既存市場を侵食しないプレーヤー。新市場が既存市場を置き換える場合、既存プレーヤーにとって問題が生じる。
・ビジネス創造型
新しい製品やサービスを、新しい儲けの仕組みで提供するプレーヤー。
・プロセス改革型
既存の製品やサービスを提供し、既存の儲けの仕組みを踏襲しつつも、バリューチェーンに変革を加えてくるプレーヤー。
秩序破壊型には無料チャットアプリの「LINE」が挙げられるだろう。「スタンプ」というユニークな絵文字を利用する、使いやすいチャット機能が支持され、利用者数は2014年4月現在で4億人とも言われている。
そのLINEには利用者同士が無料で通話できる「無料通話機能」が提供されているところが、音声通話への課金で収益を挙げていたNTTドコモやauといった携帯電話会社に対して脅威をもたらしている。LINEは音声通話で儲けるのではなく、チャットで使うスタンプなどのアイテムや、LINEが提供するゲームを有利に進めるためのアイテムに課金をして収入を得ている。音声通話は利用者を拡大する手段と割り切って、アイテム課金という新しい儲けの仕組みを持ち込んでいることで、既存の業界秩序を破壊していると言える。
2014年7月には、NTTドコモなどの携帯電話会社が、一定料金で通話し放題という内容の完全定額制の音声通話サービスを導入する結果となった。LINEの無料通話機能などの脅威が無視できない存在になったことが、導入の要因である。
その他の事例として、既存のゲーム業界を侵食しているスマホゲームの存在がある。今までは「ニンテンドーDS」のようにハードウェアを購入した上で、そのプラットフォーム上で遊べるゲームを購入しなければならなかったが、スマホゲームの多くはインストールするだけで無料で遊べ、ゲームを有利に進めるためのアイテムに課金する形式を取っている。そのため、スマホの利用者が増えるにつれ、多数のゲーム初心者が利用する流れとなっている。
ユーチューブやフェイスブックでよく目にする、サーフィンやスノーボードの臨場感あふれる動画は、「GoPro(ゴープロ)」で撮影されていることが多い。
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