シリコンバレーのシーンは光のスピードで変化している。1年に1回程度の頻度で行かなければ、新しいシリコンバレーの勢力図は分からない。米国のパンドラメディア(各ユーザーの行動から好みの曲をレコメンドする、ストリーミング型インターネットラジオを提供している)を過去に見に行った際は、課金方法をどうするのかなどを不思議に感じていたものだ。しかし回線状況が良くなった今では、サービスは劇的に広まった。一曲一曲ダウンロードするのではなく、月額9ドル99セントで好きな曲を10万曲聴くことがスムーズにできるようになった。
ネットフリックスにより映画もストリーミングで観られるようになった。料金は音楽と同様に、月額9ドル99セントだ。ネットフリックスは、過去観た映画をもとにして、質の高いレコメンデーション機能を提供している。レコメンデーション機能はサービスにはまる人を増やす工夫として大切なものだ。
音楽、映画の次は本である。アマゾンは、本を好きなだけ読んで月額9ドル99セントというサービスを始めた。このサービスは出版社から抗議を受けたが、アマゾンは抗議した会社を買収して、本の在庫も全部買うという手段も駆使してしまう。
シリコンバレーは非常に滑りやすいスケート場のようである。そこでワルツを踊り、世界が向かう方向を見ていなければ、旧世代の爬虫類のように時代に取り残されることになる。
日本国内のマーケットに目を転じると、今、60歳以上の人の消費が46パーセントになっている。このような人たちは、片道1時間半以上かけて通勤するような、モーレツ社員で頑張りくたびれた後に引退しているので、時間を持て余している。日本人は年金の3割を貯金に回す、世界でも例のない国民だ。死ぬ瞬間が一番貯金がたまっていたりする。この世代が買い物に行くと、買いたいものがなくても、なぜかいいものを買う。富が集まっているこの60歳以上のセグメントを、もっと研究する会社があっても良いのではないだろうか。
シリコンバレーは米国の中でも特殊な場所だ。よく日本人は日本企業と米国企業に大きな差がついてしまったと言うが、米国東海岸の人も同じように、シリコンバレーと東海岸の差を嘆いている。東海岸や他の地域に住んでいる起業に意欲のある人は、シリコンバレーに吸い寄せられていく。中南米・インド・旧ソ連圏・台湾・イスラエルなどからも、人が大量に流れ込む。母国にいたのでは限界があるので、これらの国・地域の起業家が実力試しに来ているのだ。
第2次世界大戦時に、日本が戦艦や戦闘機などのハードウェアの性能に注力したように、日本の会社は今でも優れたハードウェアを提供することが得意である。しかし、欧米が戦争の勝ち方をシステムとして研究し、日本が敗戦したことと同様に、日本はシリコンバレーが形成するビジネスのシステム、生態系にやられてしまっているのだ。日本だけでなく、欧州、中国、韓国も同様の状況にある。
かつてのアメリカンドリームは起業後にIPOを実現することだったが、最近はほとんどM&Aにより会社を売却する道を選ぶ。その後、創業者はその企業に残ることもあるが、もう一度起業する人も多い。その後、彼らはエンジェルとして投資家になっていく。1000億円くらいの資産を持っていることも多く、30億円くらいポンと投資するのである。
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