本書は、大前研一氏がセミナーや教育機関で話していることを中心に、「世界のビジネスを知り、日本発企業がイノベーションを生み出す環境をつくる」ために編集された書である。世界全体を見据え、日本がなぜいつまでも低迷しているのか。日本がこれから競争力を取り戻すため、今抱えている本質的な問題についての解決策を見いだしていこうという構想である。
現在の日本の経済、企業経営を考える上で、「コンシューマー」と「テクノロジー」という観点を欠かすことはできない。コンシューマーは、おひとりさま、すなわち単身世帯が増加するなどの背景を把握することが必要だ。また、テクノロジーに関しては、急速に進むテクノロジーの進歩が産業に与える影響に対して、経営者の対応が遅いことが気になる。
そのような背景の下で、大前研一氏のセミナーでは、「マーケティング技術」「アカウンティング」など、ビジネススクールにおいて一般的な講義の内容ではなく、これからの社会、経済、経営がどうなっていくのかを発信することに注力している。「経営に関する知識のデパート=大前百貨店」として、あらゆるレベルの聴衆に対して最も良いものを提供していくことを志向している。その中で共通するアプローチとして、最新の企業データを用いて、自分が経営者だったらと仮定し、どのように企業を導いていくのかを徹底的に考えていく機会を提供している。
経営者の訓練に早すぎるということはない。松下幸之助氏は小学校を出てすぐに商売を始めている。本田宗一郎氏もそうであるが、大学で学んでいないことをものともせず、世界に冠たるブランドを築き上げた。そのような日本の戦後第一世代とも呼ぶべき経営者に近い存在は、今はアジアの優秀な経営者によく見られる。
良い学校へ行って、先生の言うことを聞き、という行動に終始するのではなく、実践的な商売の体験をするなど今すぐにでも経営者として訓練を始めてみてはいかがだろうか。
2013年における世界経済の成長を見ていくと、前年と比較して全体的に鈍化している傾向がある。特にBRICSの低迷が鮮明だ。BRICSは当初、ブラジル、ロシア、インド、中国を指していたが、最近では最後のSを大文字で書き、南アフリカ共和国を加えるようになっている。
BRICSの低迷の理由は、主に政治・役所の腐敗にある。インドは政治家、中国は政治家および役人、ロシアは役人、ブラジルは治安維持において腐敗が進んでおり、各国の成長を阻害している。
欧米では近年、「ジャパナイゼーション(日本化)」という言葉がしきりに使われている。つまり、
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